エコ住宅づくり奮闘記 環境に配慮した家がほしい

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『週刊金曜日』1999年1月22日(No. 251)号 所収

昨年ひょんなことから家を建てようと思い立った。いざ住宅メーカーの展示場を廻ってみて愕然。発がん性物質ホルムアルデヒド入りの合板や接着剤に、危なシロアリ駆除剤、有害な可塑剤や安定剤を放出する塩化ビニル素材のオンパレード。アスベスト入りの屋根に代表されるような、ゴミ問題を深刻化させ資源の再利用が困難な建材も大手を振っている。居住者が『シックハウス症候群』になるのは当然で、環境問題という観点からも大いに問題あり。家づくりの期待感が萎えそうだった。
その後、危険建材を排除した設計に取り組んでいる建築家等にアドヴァイスを受けたり、あれこれ考えた結果、実施設計はプロである建築業者の力を借りつつ、基本設計はまず妻との二人三脚で考えるという道を選択。私たちの考えを理解し、いっしょに住宅建築を考えてみようという地元工務店のH建設との出会いが、この方法を可能にした。
しかし、話は簡単ではなかった。環境共生型住宅(エコ住宅)関連の設計をしようとしても、先進国ドイツやスイス等に比べ情報が圧倒的に不足している。市販建材や設備について検討しようとしたら、メーカー各社の秘密主義や根拠なき説明に突き当たり、安全性の評価以前に正体不明の製品に悩まされることになった。また、良心的な建材や設備を製作・販売している業者がいる一方で、『耐久性』や『健康』を売り文句に怪しげなものを売る業者もたくさんという玉石混淆状況を実感。残念ながら、安全かつ環境に配慮した家づくりのコストは現段階では若干高くつく。しかし、安全な家に住みたいなら建坪を減らせばよいと納得。むしろ、建築側と施主との間には建築内容、とくに使用建材等の安全性とコストに関わるインフォームドコンセントが必要ではなかろうか。
試行錯誤の末、?Hり着いた基本設計の概要は次の通り。まず第一に、木造で有害建材を使わない家づくりを指向する。無垢材と土壁を前提にした設計で工事業者や居住者の健康を損なう有害な化学薬剤を排除。断熱材には炭化コルクを採用し、再資源化の困難な素材や建材は原則的に使わない等、この分野の先駆者らの設計内容を借用しつつ自分なりの考えも加えてみた。成分データを公表しない建材は論外、キッチンをはじめ住宅設備についても使用素材に注意を払わない既製品は避けた。
第二に水道給水管の非塩ビ化。本誌二二九号(1998年7月31日)でも触れたが、塩化ビニル被覆鋼管は住宅内の赤水原因になるだけでなく、発がん性物質や環境ホルモン(内分泌撹乱化学物質)を溶出させる。これではマズイ。今回の設計では架橋ポリエチレン管を採用し、かつ漏水防止や維持管理に配慮した工法を選択した。第三は、雨水等の水洗便所用水への活用。屋根に降った雨等を地下に蓄え、小型ポンプでトイレに送るというシンプルなものだ。第四に太陽エネルギーの活用。必要な電気エネルギーを自宅屋根上で発電するとともに、真空ガラス方式の太陽熱温水器を導入し給湯器の燃料使用量削減も図る。天の恵みを活用しようと考えるだけで気持ちがワクワクする。第五に電磁場対策。欧米には電磁場防御を考慮する建築家も多いらしいが、日本ではまだまだ。白黒がついていない電磁場問題を「安全」と読み替えるのは電力会社や御用学者に任せておき、自宅設計では欧米例を参考にして対策を練ることにした。電気機器の配置や配線経路の検討に加え、遮蔽ケーブル(エコケーブル)もスイス辺りから入手しようと画策中だ。
建築工事は、今夏の竣工予定で現在進行中。工事の進捗状況についてはhttps://arita.com/で公開中。設計資料も整理でき次第、順次公開していくつもりである。

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