家づくり実践記(6):赤水・毒水お断り

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日本消費者連盟関西グループ『草の根だより』(99/02月号所収)

今回は水道の話。住宅設計では構造や室内環境に関する議論はたくさんありますが、水道設備について注意を払っている建築関係者や施主は少ないようです。しかし、一般家庭の水道管(給水管)には赤水発生の可能性と管素材の有害性という、大きな「落とし穴」があります。


赤水というのは、鉄製の水道管が腐食してサビが混じってくるために水が赤色になるというのが名前の由来。そもそも一般に家庭用水道管に使われる素材は鉄管で、鉄は簡単に錆びるので表面を合成樹脂で覆って防護しています。設置年月が経てば次第に老朽化してサビていきますが、必ずしもそれだけが原因ではありません。最近、新築1年目2年目というのに蛇口から赤水が出てきたという話を何件も聞いています。それは施工時のカケやケズレを放置したために発生しているのがほとんどで、鉄管を使う限り、新築既築にかからわずサビの問題から逃れることができません。

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また、管の被覆に使われる合成樹脂とは塩化ビニルやエポキシ樹脂で、飲み水ラインに発ガン性物質や環境ホルモンを入れているようなものです。筆者も何度となくこの種の危険性を訴えてきましたが、力及ばず広範な話題にはなっていません。問題の所在に気づいた人が塩ビ管はイヤだ、安全な別の配管材を使いたいと希望しても、行政当局は許可しないのが普通でした。変化を好まぬ役所体質と「事なかれ主義」、それに塩ビ業界との癒着、背後の問題はいろいろと複雑です。幸い、ここ数年来の水道法改正で比較的自由な配管設計ができるようになりましたが、そのことを知っている建築関係者はほとんどいないのが実状です。

さらに厄介なことに、一昔前の建築施工では水道本管との接続に鉛管を使うのが普通でしたから、場合によっては鉛入りの毒水を飲んでしまっている危険性もあります。水道当局も水質基準を越える鉛が人体にきわめて有害であることは理解しているので、水道本管の鉛部分の順次取り換えを行っていますし、各家屋への引き込み接続部分は硬質塩ビ管での接続を勧めています。しかし、既設の鉛管については知らん顔を決め込み、放置されたまま。十数年前までは鉛管での接続を勧めてきた行政責任を問われるのがイヤなのでしょうか。困ったことです。実は、拙宅現場も20年以上前の造成地で、鉛管接続が判明し、道路をめくって配管工事をやりかえるコストや手間に四苦八苦しています。

さて、この赤水や塩ビ等の危険性から免れる方法があるのかどうか?少なくとも、個人個人の住居内、あるいはマンションのような集合住宅の配管を安全なものにすることは可能です。ただし、その分、施主には不勉強な自治体や配管業者を説得していくための法的な知識を勉強したり、可能な技術の存在を伝えていく努力が要求されます。 次回は、私の実例をふまえて、その紹介をしましょう。