年の暮れのお寿司 その1

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otome1312行きつけのお寿司屋さんが店舗改装。先日出かけてみると、上品でシックな感じにバージョンアップ。新装でお店の気合いが入っているせいか、いつも以上に口福な時間を過ごすことができました。場所は金沢、乙女寿司。写真と説明でお裾分け。いっしょに食べた気分になれたら幸甚。

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前回9月に訪れた時、10月は1ヶ月かけてお店をいじるのでお休みさせていただきます、とのこと。大将曰く、そろそろ水回りを直す必要が出てきた、お手洗いも年配の方々から和式では辛いという話も出ている、お座敷もイス対応に作り直したい等々というのが改装理由でした。もうすぐ新幹線が金沢までやってくるので、それまでに手直ししておいた方が何かと便利なんでしょうね。

新装開店は11月のカニ解禁日前後。私たち夫婦が訪れたのは12月の終わり頃。道路からの入り口付近が黒壁塗りになり、お店の引き戸も右端に移動。入ってみると、なんか上品でシックになっているではないですか!

よくよく見るとライティングがダウンライトになり、明るさが柔らかく優しくなったことで店内の感じが一変しています。また水回りや焼き場のレイアウトが作業しやすく変えられたことで、客側から見た店内の景色がデザイン的にすっきりし、銀座の割烹や高級バーになったみたい(笑)。見栄えはそうですが中身はいっしょです、と大将は照れ笑いされていましたが、なかなかの雰囲気に見事にバージョンアップしています。

肝心のお寿司はいつもながらのこの上なし。私らの注文はツマミとにぎりの美味しい所を一通りの、その日のお任せ。北陸の海の幸の季節感を味わうにはこれが一番。

まずはツマミ。スターターは平目。一日寝かせたもので、滋味で味わい深い。河豚みたいな弾力性を感じながら噛むと旨味が滲みだしてきます。云うことなし! 名前の通り、今日のつまみです。

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2つ目のヤリイカはいつもながらの美味。今回のは鹿の子カットが皮一枚残したくらいに包丁が入っていて、まるでハモの骨切り。口の中に入れると、飯粒のようにほどけていくのが何とも悩ましい。鮮度、仕事、切り胡麻の演出、何をとっても完ぺき。

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次はお造り2品、寒ブリとバイ貝です。これも文句なし。

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続いてカワハギの肝和え。醤油濃い田舎味ではなく、上品な味わいに仕立てられています。ミドリの添え方もアートな感じで器の貫入が中身にマッチして素晴らしい。この演出、2番手のA子さんの仕事が素晴らしい。パッパッと降った一味がピリリとアクセントを効かせています。私は好きな味ですが、一味の追加は穏やか味好みの人とは評価が分かれる所かもしれません。

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そして、雲子ポン酢。クリーミーな食感が口の中で蕩けていきます。

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次はこの季節の定番、香箱ガニです。この季節にこれを食べないわけにはいきません。場所によってはコッペとかセイコとも呼ばれますが、香箱、つまり香りの箱というところがまさに金沢といえば金沢らしい。小さな足1つ1つから丁寧に身を取り出し、ウチコと肩の身をほぐした上に並べてあるので食べやすい。この作業を自分で行うとそれなりに大変だけど、お店で食べる時はそれが省けるのがマル。

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乙女寿司さんでは活きている雌ガニを直接調理するので鮮度も抜群。ソトコの旨味が感じられる位。見ているだけで満足ですが、プリプリな身とこってり甘みの乗ったウチコを口に入れると、・・・思わず頬が緩みます。あぁ、カニとはかくも美味しいものなのか!! 昔カニキライだった自分が別人28号になったみたい。ちなみに、なにゆえに香箱なのかというと雌ガニが子を持つから子箱、それがこ~ばこ(香箱)に転化したものらしい。

香箱を食べ終えると、甲羅酒もどうですかとのこと。連れ合いは香箱にお酒を入れてもらい愉しんでいました。私は後で炭水化物量をできるだけ少なくしておきたいという配慮でパス。糖質制限で寿司屋に行くのかと訝しがる人もいるでしょうが、最後に血糖値を紹介しますのでお待ちあれ。

それから出てきたのはブリカマ。北陸の旬のブリのカマの部分を切り分けたもので、炭火で色よく焼いています。ジューシーな脂が甘みを帯びる逸品。何気ない焼魚のようで職人さんの腕が光ります。デキ立てはいつもながら美味ですな〜。香箱と並び、毎年この時期には欠かせない海の幸です。今年も生きていて良かった・健康でいて良かったと実感させてくれました。

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頃合いを見計らい大将が、アンキモもありますよ、どうですか?と問いかけてきたので是非それもといただきました。冷蔵庫から出してきたのは、でっかい肝。そうじして雑味をとった肝をお酒などに漬けて熟成させたものでした。何度かこのお店で食べていますが、いつ食べても美味しい。味はこってり、そして深みがある。アンキモの方がフォアグラよりも凛とした旨味があるし健康的なので、フランス人にこそ味わって欲しいものだといつも思う次第です。

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ツマミのシメは白子のすり流し。雲子をクリーム状にすり潰してお出汁で温めたもの。濃厚な味わいとともに、上に乗せたユズの香りが鼻に抜け、温泉に浸かっているような、ほんわかした気分を醸し出します。これもまた美味の極致。

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さぁ、ツマミはオシマイ。次はニギリだ!