原著にあたる

.Lowcarboあるいは糖質制限

Atkins Diabetes Revolution先日お伝えしたアトキンスさんの原著、数日前に読み終えました。英語ですから、日本語を読むようにはとてもいきませんが、それでも何とか面白く読めました。オリジナルにあたる意義も感じました。

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アトキンスさんの本を読み終えてわかったこと。
まず、この本が日本で糖質制限を始めた医者たちのタネ本になっていること。科学的根拠がロジカルに整理されていてわかりやすい。

氏の目指す糖質制限量は一般に1日20g以内とされています。でも、本人はそれだけでは終わらせていませんでした。

糖質の少ない野菜類や大豆などにもそれなりに炭水化物(糖質)が含まれるので、20g/日では米やパンなどの主食は摂れません。この点をとりあげ、これでは厳し過ぎる、実行できない等と批判する向きがありますが、これは本を読んでいない者の言い分です。

アトキンスさんは血糖値の変動を眺めながら5gづつ追加していき、40g~60g/日の範囲で自分にとっての適正量を見つけていこうと提案しています。20gではシンドイことを知っているからこその提案でしょう。これなら江部メソッドとほとんどいっしょ。違いは、最初を厳しくするということ。

彼の提案は云われるほど厳しいものではありません。原著にあたっていなかったら、アトキンスさんについて誤解してしまうところでした。あぶないあぶない。

余談ですが、ローバート・アトキンスさんに関する日本版Wikiは、事実を淡々と記述する英語版とは違い、不確かで些細なことを取り上げ氏の足を引っ張ろうとする意図が感じられ、イヤな気分になります。Wikiは書き手の素性・素質で内容が大きく変わるので要注意ですね。

Dr. Bernstein's Diabetes Solution: The Complete Guide to Achieving Normal Blood Sugarsタネ本といえば、もう1つ。バーンスタインさんの「Dr. Bernstein’s Diabetes Solution」というのもあります。バーンスタインさんと先のアトキンスさんは米国で糖質制限を提唱してきた二大巨頭ですね。

インスリンに関する代謝の説明や糖質制限の科学的根拠についてバーンスタインさんの解説も確認したい。そう思い立ち、こちらもチェックすることにしました。調べてみると、日本には2つ前の版の翻訳しかなく、おまけに絶版状態。原著は既に2011年版で、電子ブックはなくハードカバーのみ。えいやっと勢いで注文したら、昨日到着しました。

読み始めると、日本で紹介されている話とどうも違う。日本で出版されている某本には「バーンスタインさんは緩い糖質制限」だと解説されていましたが、そうではありません。むしろ、個々人の血糖値を適正に保ち変動を押さえるために、それぞれが妥当な糖質量を探っていくことを提案しています。

たとえば、第11章の食事プランの一般ルール の箇所では以下の通り(訳出は私)。

糖質制限をしようとする成人に対し私は、朝食には(ゆっくり消化する)炭水化物を6g以下、昼食は12g以下、夕食は12g以下を薦めている(p.178)。

つまり、合計で30g/日。後半に出ている食事メニューでもその程度の糖質しか認めていません。アトキンスメソッドや江部メソッドよりも厳しいくらいです。この話のどこが、「バーンスタインは130gの糖質制限」なんでしょうか。この件、きっちり読んでからもう一度紹介しましょう(期待せずにお待ち下さい)。

ところで、なぜ原典・原著なのか。
私だって英語が読み易いわけでは決してありません。でも、日本語になっていない、あるいは翻訳本が入手困難な場合、(読もうとするなら)原著にあたるしかありません。また、翻訳があっても、もともとのロジックや微妙な意味合いが知りたい場合には原著をあたるのがベター。翻訳者の背景や素性に利益相反がある場合は尚更です(これが一番厄介)。今回の糖質制限絡みについても怪しいニオイがしてきました(苦笑)。

思い起こせば、「原典にあたれ、原著を読みなさい」と教えて下さったのは、宇井純さん(公害原論、故人)。最初にお会いした時、当時大学1年生だった私らに、御用学者への対処法として伝授して下さったことを昨日のことのように思い出します。