オール電化と原子力発電

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以前も話題にしていたと思っていたオール電化。さきほど検索をかけてみると本サイトにはありません。あれっと思いつつ一筆アップすることにしました。
TVコマーシャルなどでハウスメーカーなどがゼロエネルギーハウスとかで宣伝しているせいか、巷では環境に優しいオール電化となっているようですが、とんでもはっぷん。あれは出力調整できない原子力発電を支える仕組みに他なりません。自然エネルギーを使おう、できるなら化石燃料や核燃料を使った発電はやめてほしい、という願いを持つ人はオール電化を採用してはいけません。…

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「何々してはいけない」というのはあまり好みではありませんが、それでも真実を隠したりインチキをする人たちがいる限り、ときどき「何々してはいけない」と警告を発したくなります。性ですかね。

さて、オール電化。家庭で必要な熱源を全部電気にしようというのが表向きのオール電化ですが、その背後にある本当の存在意義を業界は決して伝えません。それは何か。

オール電化とは電灯だけでなく、暖房も炊事調理もお風呂も洗面温水も全部電気で賄おうというもの。でも、電気では効率が悪いので、お風呂や調理に電気を使うためには電気代があまりにも高くなります。冬季の暖房を電気で賄うことを考えれば明らかですね。つまり、電気だけで熱源を賄おうというのは、光熱費からいえば非常に分が悪い。

ところが、オール電化という仕組みでは夜間電力の価格を昼間の3分の1くらいに安くします。こうすることで夜間にお湯を沸かし、1日の給湯用さらには暖房用に供することで全体としての電気代を抑えることが可能となります。オール電化とは夜間電力の安さによって成立する方式といっても過言ではないでしょう。

じゃ、なぜ夜間の電気代が安くなるのか。発電所で作る電気が夜だけ安く作れるのでしょうか?まさか、そんなことはありません。じゃなぜ? 安くしないと大余りの電気が売れないから、です。夜間の電気は使う人や事業所が多くありません。売れないと作った電気が余って無駄になる。それでは困る。だから、安くしとくから買ってね、というだけのこと。

ほんじゃ、売れない夜間には発電所での電気作りを減らして少ない需要に対応したらいいではないか、と思うのは当然です。ところがそうはいかないのが現代日本の電力事情。

実は、夜間の最低発電量を決めているのは原子力発電所の発電能力なのです。日本にはたくさんの電子力発電所がありますが、出力調整が極めて難しいので夜間電力がどっさり出来てしまいますが、電気は作り貯めするわけにはいきません。その原発夜間電力を何とか使ってもらおう。そのためには値段を安くしないと訴求力がありません。原発の出力調整ができるのなら夜間の電力需要に合わせて発電すればいいだけですが、それができないための苦肉の策にしか過ぎません。(ちなみに揚水発電は一種の電気貯金ですが、これもまた原発との関係で見なければなりません)

厄介なことに、原発夜間電力の生き残り策であるオール電化をソーラー発電とパックにして売り出しています。昼間はソーラー発電で電気を作り、余った分は電力会社に販売し、日射がない時間帯である夕方夜間は非常に安価な原発電力を購入する。こうすることで、支払う電気代が少なくなり、光熱費を抑えることができます。もう説明の必要はありませんね(注)。この経済合理性追及の背後にあるのは、原子力発電の存在とその余剰電力の購入という仕組みがないと成り立たない話なのです。これがはたして自然エネルギーの推進になるのでしょうか? 私はそうは思えません。

これからソーラー発電を導入しようという人は上記のことをじっくり考えて下さい。ソーラー発電といっしょにオール電化契約をすると、それが原子力発電の延命に手を貸すことになります。せっかくの自然エネルギー導入が原発とワンセットでは哀しすぎます。それでもいいのでしょうか。

また、既にオール電化を採用している方々へ。電力契約を切り替えるのは面倒ですが、原子力発電に反対の立場であれば、契約切り替えを行うべきです。ソーラー発電でオール電化という契約をなさっている方は契約変更だけでなく光熱費の大幅アップに繋がることから抵抗を感じるかもしれません。でも、ご自身で自問自答してみて下さい。ソーラー発電はいったい何のために導入したのですか。自然に優しいとか、エコであるとか、そういった意識と原子力発電の延命策への協力はいったいどう折り合いがつくのですか?

(注)自宅設計を行った時、私自身も安価な夜間電力を使えば光熱費を抑えられると考えました。でも、その安価の背後に原子力発電の存在があることを知り、その計画をパァにしました。その過程には面白い話があるのですが、それは別の機会にでも(苦笑)。