CM化するニッポン

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CM化するニッポン―なぜテレビが面白くなくなったのかCM化するニッポン
谷村 智泰 著 (WAVE出版 2005/10/23)

私は一昨年前に新聞の購読をやめました。テレビの方もブラッド+やエウレカセブンなどの漫画は大好きですが、時報替わりの朝番組以外はほとんど見ません。理由? 面白くないから、です。信用できない面が多いし、日々のニュースについてはインターネットの各社版でチェックすれば十分。
さて、テレビが面白くないのはなぜか。俗悪番組が多いのはどうしてなのか。また新聞等のメディアが信用できないのは本質的な問題なのか否か。そんな目くじら立てなくてもいいのに…、そんなのは思い込みで考え過ぎだと思った人は要注意。そういう人にこそ本書を読んでほしいものです。この本の論旨は明晰、現代社会の仕組みを見事に暴いているといっても過言ではありません。…

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本の帯に「あなたのココロと財布が狙われている」とあります。その道具が広告つまりコマーシャルであることに気づいている人は多いかもしれません。でも、その手法は?誰が何のために?その行き着く処は?等と問いかけていくと、だんだん漠然としてくるのではないでしょうか。

テレビの広告あるいはコマーシャルとはいったい何なのか。著者は「テレビ局にとっての本当の商品」だと説明し、のっけから読者の頬をビンタしてきます。広告の誕生から進化、その中でいかにテレビ番組が退廃してきたのか、それらに関する著者の議論には感服します。また、広告のないはずのNHKの「広告」についても容赦なく議論が展開されていきます。

とりわけ、著者のいう『見えない広告』には注意を払わなければなりませんが、説明は読んだ人のお楽しみにとっておきませう。ただ個人的な話をひとつ。以前からテレビ番組の中で明石家さんまがざーとらしくタバコをするシーンが気になって仕方ありませんでした。演出上必要ないし、ゲストと対話している最中に喫煙とは礼儀も何もありません。でも、あれがこの本でいうところの『見えない広告』だと考えれば納得納得。テレビのバラエティ番組でタバコを喫えば1本当たりいくらのギャラになるのでしょうか、知りたくなってきました。

小泉劇場の舞台裏、戦争報道の真実、みんなの知らないところで進められている仕掛けのテクニックを一通り紹介しながら、一気に最後まで読ませてしまいます。最後のあとがきも秀逸で、内容が深刻な割には読後感はすっきり。

著者は博報堂や外資系コンサルティング会社で働いた経験があるとのこと。インサイダーならではの説得力のある説明に頷くことしきり。メディアのもつ本質にも肉迫しています。本書の内容からすると、新聞やTV等で紹介されることはまずないでしょう。私自身、週刊金曜日に書評が出ていなければ手に取ることもなかったかもしれません。

繰り返します。この本は、広告つまりコマーシャルが意味するものを明らかにするとともに、その背後にある現代社会の仕組みを見事に暴いています。知っているのと知らないのとでは大違い。是非お読み下さい。三重マルのお薦め!。