空腹感と根拠なき三食主義
2012/12/07
うっかり世間常識に嵌まっている自分に気づくことはありませんか? 私はよくあります。たとえば、「一日三食、食べなさい」というのもその1つ。
なぜ三食なのか、ニ食や一食ではダメなのか。朝ご飯を抜くと調子が悪くなるなんて云いますが、本当なのでしょうか。NHKや権威筋の話を疑えなんて日頃云っているくせに、なぜこの件はスルーだったのか恥ずかしい限りですが、実はこの三食主義には根拠がなさそうです。そのことを知ったのはつい最近で、糖質制限を始めてからでした。
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朝ご飯を抜くと体の調子が出ないとか、健康に悪いとか、そういう類の話はよく聞きます。お腹がすかないのなら食事はいらない、というのは天の邪鬼的発想でしかなく、まぁ世間の言い分に理があるのだろう。そう考え、規則正しい生活には朝、昼、晩の三回の食事を欠かさないこと、と私はずっと信じていました。でも、この三食主義には根拠がないらしい。
改めていろいろ調べてみると、三食主義の根拠はすべて後付け。曰く、必要なエネルギー量から計算して3回が健康に良いとかバランスがよいとかですが、根拠が曖昧で科学的だとは到底云えません。定期的に食べなければならないとしても三回に意味があるとも思えません。
三食食べるようになったのはつい現代の話ですから、昔の人は皆不健康だったということになりかねず、合理性もありません。それよりも何よりも、三食主義というのが、ご飯やパンのような糖質いっぱいの主食を摂ることを前提とした議論に過ぎないことが引っかかります。糖質主食の前提が崩れると三食主義は瓦解してしまうのではないでしょうか。
三食主義というのは、庶民を規則正しい社会生活のサイクルに組み込むために誰かが編み出した時間管理のライフスタイルではないか、なんて考えてみたりもしますが、私の関心は文化文明論的な考察にはありません。問題なのは、三食主義が私たちの生活や命のリズムとはあまり関係のないもので、社会的な規範らしいということ。
現在私は、糖質の多いご飯、パン、麺類を食べない糖質制限の生活を先月から行っていますが、始めてみると空腹感がなくなってきました。もう少し正確に言えば、おなかが減ってきて何か食べたくなるという強い誘惑感が少なくなりました。明らかに以前の空腹感とは違います。これにはちょっとびっくり。糖質制限でも最初は三食だったのが、今は二食だったり一食だったりでも十分です(苦笑)。
なぜ空腹を感じるのか。調べてみると、これがはっきりしません。満腹感の方は、胃袋が拡張して迷走神経が脳にもうお腹いっぱいだと伝えるとか、血糖値の上昇がもう食べ物は入りませんという信号になるとか、いろんな説がありますが、空腹感についてはようわかっていないというのが現時点での考えだそうです(参考にしたのは東京都神経科学総合研究所の解説です)。
空腹感とは少し違いますが、お腹いっぱい美味しい料理を食べた後でラーメンやカレーライスが無性に食べたくなったりするのは何故でしょうか。空腹だからではないですよね? こちらは五感と食物記憶では説明つきません。むしろ、インスリンが大量に出たことで血糖値が急激にダウンしたことが異常な食欲に繋がっているのではないか、と考える方がいいのではないでしょうか。
そう考えてくると、糖質制限で空腹感をあまり感じなくなったのは、どうやら血糖値のアップダウンが少なくなったことと関係がありそうです(科学的見解ではありません、念のため)。また、異常な食欲や過食要求もなくなってきたのもまた嬉しい成果です。
かくかくしかじか、根拠なき三食主義のことを知って、今までの私の食生活はいったい何だったんだと唖然とします。糖質制限を始めてから、空腹感が必ずしも生理的欲求ではなく、社会的規範や時間管理という人為的束縛によって産み出されたものではないかという感じがしてきました。とにかく、常識を疑え、ということ。
生きるのに必要なエネルギーを食で確保することは必要不可欠ですが、空腹感がないのなら食事の回数は減らせます。糖質制限を薦める医者たちが、糖尿病を克服したいなら「常識」を捨てなさい等というのはこういう所にもありそうです。糖尿病医学界が「常識の壁」を越える日は、いつ来るのでしょうか。