幻の250km〜300km圏内避難

.opinion 3.11

「東電原発から250km圏の避難計画」を検討したという前総理(AERA ’11.11.7 no.50号)。その本人がなぜできなかったのか、弁解しています。

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菅前総理の言い分は非常に興味深い。原発事故当初、東電本部が事故情報を独占したため、政府の初動対応が遅れてしまったこと、東電社長や幹部が事故対応を放り投げようとしていたこと、東電福一原発がターンキーシステムだったこと(電力会社の自前技術でなかったこと)、原発の防災計画は深刻な事故に対応していないこと等々。彼に云わせると「基本的には3月11日の前に全部出ているんです」とのこと。

しかし、だからといって政府の責任を免れることはできません。だって、そんなデタラメな東電やデタラメな斑目某などの原子力マフィアを放置してきたのはこの国の政府だから。

AERA記事を読んでわかったことがいくつか。前総理は「かなり早い段階」で、どれくらいの人々が避難しなければならないかを数人の専門家に依頼していたとのこと。ところが、最悪のケースでは250km~300km圏内が避難しなければならないという予測に「背筋が寒くなり」、思考停止してしまったようです。3500万人避難となれば日本社会が壊滅するだろうとパニクってしまったらしい。その結果、現実的な対応としての、とりあえずの80km圏避難とか、風向きを考慮した避難区域の策定とかが出来ませんでした。

私思うに、経産省官僚や原子力マフィアたちは前総理に深刻な数字を見せて驚かせ(あるいは脅し)、彼らの思い通りに操りたかったのではないか。でも、それに勝てなかったのは菅さん自身の能力不足。

もうひとつは、311原発事故の処理は前総理には荷が重すぎたという事実。菅前総理が原発に詳しいと嘯いても、もともと彼は原発事故が発生したら何が起きるのかを知らなかった。だから、対処法が経産省などの言いなりになってしまいがちだったのではないか。彼自身が「原発について3月11日を境に考え方を変えました」と明言しているのはその証拠。それにしても未だに原発事故を(大事故で破局の世界になることもあるのに、メリット・デメリットを天秤にかけるような)リスク評価で量ろうとしていること自体、私に云わせれば、

厄介なのは前総理を戯け者のように報道したメディアの存在です。メディアが原子力マフィアの御用機関であることは皆さん既にご存じの通りですから、前総理の言い分をなぜ貶めようとしていたのかを考えなければなりません。

事故当初の深刻さがいまだに秘密にされている上、その東電が逃亡を画策していたことを考えれば、ベントの件も東電本社乗り込みの件も巷で言われていた話とは違うのではないか(私も反省しなければなりません)。実は総理交代後に枝野某が前総理の「功績」を吐露していたこともあり、AERAでの説明の信憑性は高そうです。とくに浜岡原発ストップはいくら褒めても褒めきれないほどの大功績。浜岡だけでなく日本全部の原発を完全に廃止していたら、歴史に残る政治家になっていた筈です(残念)。

それにしても、250km圏とは云わないまでも100km圏程度の現実的な対応はできなかったのか、今更ながら悔やまれます。今現在「除染」などと言いつつ、20kmからこども達を住まわせたり、汚染地域で農作物を作らせたりする話を聞く度に、

と思わざるを得ません。