松本市下水汚泥からヨウ素131、それも6月末以降に! なぜ?

.opinion 3.11

「こどもを守ろう SAVE CHILD」サイトのニュースに不思議な話が載っていました。長野県松本市のHPを覗いてみたら、今年6月末から7月にかけて下水汚泥を分析したところ、放射性セシウムではなく放射性ヨウ素が50ベクレル/kg検出されたとのこと。なぜなのか、少し考えてみましょう。

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松本市は福島県の東電福一原発から約300km離れています。市長がチェルノブイリでこどもの甲状腺ガンの治療に取り組んでいた菅谷氏ということもあるのか、早くから下水汚泥の放射線測定に取り組んできたようです。その松本市の調査では5月中頃から6月中旬までは放射性セシウムも放射性ヨウ素も検出されていなかったのに、6月下旬からの分析で放射性ヨウ素が脱水汚泥1kgあたり50ベクレル見つかったとのこと。なぜ?

まず、下水汚泥を作るのにどれくらいの時間がかかるのか。汚泥滞留時間(SRT)は一般に3~6日くらいですから、脱水プロセスまで含めても高々7~10日間くらいで汚泥ができ上がります。これに下水処理場に入ってくるまでの時間を加えて、約10日~2週間程度。6月末に放射性ヨウ素が見つかったということなので、6月初旬前後に高レベルの汚染があったことになります。とすると、松本市で見つかった放射性ヨウ素はいったい何が原因なのか。

東電原発事故が起きたのは311震災&津波の後。3月12日からの水素爆発などで放射性物質が環境にばらまかれたのはご存じの通り。静岡県で栽培しているお茶からも放射性セシウムが検出されたくらいですから、汚染地域は100kmよりも遙か遠くまで広がっています。当然松本市も汚染されたことが疑われますが、問題は今回見つかったのがセシウムではなく、放射性ヨウ素だけ。

ヨウ素131の半減期が8日であること、5月中旬~6月中旬には検出されていないことを考えると、当初の爆発によるものとは考えにくい。それでは、6月初旬前後に大規模な放散があったのでしょうか。ニュース等でざっと調べてみると、

6月4日、東京電力は福島第1原発1号機の原子炉建屋1階南東で湯気が立ち上り、毎時4000ミリシーベルトの放射線量を計測したと発表。これは事故最大の汚染(毎日新聞 6/04他)

というのがありました。

使用済み燃料プールからなのか、それとも原子炉本体なのかは不明ですが、高レベルの、それも事故最大級の放射性物質を含んだ水蒸気が周辺に飛び散ったのは事実のようです。東電原発事故はまだまだ終息していないという証拠みたいな汚染ですが、この時の放射能汚染の拡散実態は明らかにされておらず、セシウム汚染がない松本市の下水汚泥との関連はどうなっているのか。

もし、今回のヨウ素131の検出が松本市だけなら別の理由も考えておく必要もありますが(注)、山梨県や東京都、静岡県でも同じような時期にヨウ素131が見つかっていること、それも6月中旬以降にピークがありそうなことを考えると、やはり東電福一原発からの放射性物質だと考えるのが妥当ではないか、というのが現時点での私の考えです。

(注)拙著「あぶない水道水」でも触れましたが、淀川水系でも放射性ヨウ素が見つかったことがあります。原発事故なんか全く関係ない時期ですし、自然に沸いて出てくるはずもありません。その時の推論は、水源上流のどこかで放射性ヨウ素を使う研究機関か医療機関がこっそりタレ流したものではないだろうかというものでした。松本市の場合はどうなのかは、放射性ヨウ素の組成などを調べれば原因を追及できるはず。