南相馬市の心意気

.opinion 3.11

日赤で集めた義援金の配分について国が介入してきたことは先に示した通りです。このことで福島県の南相馬市等ではちょっと面倒なことになってしまいました。避難退避しているのに義援金を受け取れない人が出てきたからです。

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義援金は「避難指示や屋内退避指示が 出ている半径30キロ圏内の世帯」も配分対象にしました。これが東電の賠償金とどういう関係になるのか未だ曖昧ですが、まぁそれは横に置きましょう。

南相馬市と福島第一原発との位置関係を見ると、20km圏内の警戒区域に一部が含まれるだけでなく、30km圏内の緊急時避難準備区域(少し前までは屋内退避区域と呼ばれていました)があり、さらに50km圏内の計画的避難区域に入っています。つまり市内に3つの危険区域指定があります。

ところが、第一次義援金の対象となったのは30km圏内の世帯だけなので、市内が2分されてしまいました。これは非常に厄介な問題を引き起こします。だって、人為的な線引きでお金が貰えるかどうかが変わってくるから。

実態を考慮するなら距離で被曝の有無を判断するのは科学的ではありません。風向や風力、そして天候によって被曝の内容が変わってくるからです。距離ではなく、実測の被曝線量の多寡で避難や退避を判断するのがベターであることは前々から指摘している通りです。

困った南相馬市はどうしたかというと、「日本赤十字社などから義援金が支払われない30キロ圏の外に住む世帯に、独自に義援金と同額を支給する方針」を打ち出しました。つまり、市独自で義援金を出そうというのです。南相馬市の桜井市長は「市の呼び掛けで避難した(30キロ圏外の)住民を省くわけにはいかない。避難を求めたのは市だから」と説明しているとのこと(朝日新聞 2011年4月19日)。あっぱれ、市長! 仁義に篤いというのはこういうのを言いますね。

ただ、そのためには約8億円が必要です。市では財政基金を充てる予定だというのですが、調べてみるとその基金は20億円足らず。原発事故復旧が簡単ではないこと、今後の復興事業のあれこれを考慮すると、これはかなりしんどい。

南相馬市といえば、福島県や大手企業が押し付ける産廃処分場に反対し、市長はその反対運動から生まれています。筋の通った立派なリーダーによって運営されている処というべきでしょう。

おまけに、周辺自治体が原発と「共存」する道を選んできたにもかかわらず、南相馬市は原発の迷惑金(原子力発電施設等立地地域特別交付金)を1円も受け取っておらず、国や東電等から煙たがれています。そのせいか、今回の震災&原発事故では国や東電だけでなく、メディアからもシカトされてきたのは田中康夫さん等が指摘してきた通り。

南相馬市の心意気を潰してはなりません。原発のいらない社会をめざそうと考えるのなら、尚更です。今まで原発と距離を置き、そして今まさに原発からの被曝問題とド正面から向かい合っている南相馬市がきちんと生き残れるかどうか、これは大きな試金石となるはずです。

じゃ、私たちは南相馬市を応援することができるでしょうか? できます。

それも、いつ相手に届くのか全くわからず、国が配分内容に介入しても何ら文句が言えないような義援金ではありません。ふるさと納税を利用する、それがこの方法です。

この制度を使えば、居住地で納入する地方税の一部を、自分がこれぞと思う自治体へ振り分けることができます。「ふるさと納税」制度は、生まれ故郷に限らず、どこの自治体に対しても利用できる制度です。納税(寄附)額が一定割合以下なら、自己負担は約5000円です。寄附した後、確定申告する必要がありますが、大した手間ではありません。南相馬市と縁もゆかりもなくても、その心意気に賛同して「ふるさと納税」してみる、というのもアリでしょう。もちろん、そんなことは考えず、普通にカンパするというのもアリです。「ふるさと納税」にせよ、普通のカンパにせよ、確実に南相馬市にお金が届きます。

カンパというのは気持ちの問題であり、お金の多寡じゃありません。喧伝したい気持ちもわかりますが、いくら100億円でも、それを他人に言いふらせば商売や宣伝といっしょ(余談でした)。

これからお金を出そうという人にお願いしたい。原発迷惑金を受け取らず、国や東電に決して屈せず、メディアからのシカトにもめげず、住民の安寧をめざして日々がんばっている南相馬市を、あなたの送金先の候補として是非一度考えてみて下さい。私たちの気持ちが集まれば、それが脱原発の一歩にきっと繋がるはずです。
南相馬市への義援金についてはこちらをご覧下さい。