デフレ下の日本でも上がってきたモノ

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物価がほぼ横ばい状態だったこの30年。しかし、その中でも上がってきたものがあります。漫画雑誌や国立大学の授業料などです。特に授業料の高さは日本の未来に暗い影を落としています。

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この30年日本の物価はどう推移してきたのか。あるサイトに載っているデータによると、その上昇率は30年で1割程度(96から105.6)ですから、年0.3%程度の少なさでした。おまけにその少ない上昇分のほとんどがここ2、3年のものであり、それまでの27、28年はほぼ横ばい状態でした。最近急に物価が上がってきたという声が多いのは数字からも窺えるところです。

出典は明治安田生命資料

世界各国ではそれなりの物価上昇があったのに日本ではほとんど物価が上がらなかったこと、そのことが「安い日本」を創り出したことは前回触れた通り。ところが、この日本でもしっかり価格が上がってきたものがいくつかあります。

まず漫画雑誌。30年前は約200円でしたが、今では300円超で約1.5倍(ちなみに私が小学生の頃は40円50円でした)。一般の消費者物価とは違い、じわじわと上がり続けてきました。

それよりも上がっているのは国立大学の授業料。1975年(昭和50年)に年間36000円だったのが翌年96000円、1978年に14万4000円、1984年に25万2000円、1990年に33万9600円、1995年に44万7600円となり、現在では53万5800円。桁違いに高くなりました。現在、各大学の裁量で2割増にすることも可能なので、更に上がる余地があると言えます。

国立大学と私立大学の授業料等の推移 (出典はNHK)

ちなみに私が大学に入った1975年には年間36000円でしたが、その前年の1974年は12000円だったので1年で3倍にアップ。50年間でみると45倍という凄まじさ(1974年比)。1970年代の石油ショックを経て所得水準が1桁騰がったのでそれを割り引く必要がありますが、それでも所得水準が上がらなくなった35年前と比べると国立大授業料は1.6倍、デフレ下のここ30年でも1.2倍になっています。

さて、この値上がりがいったい何を意味してるのか。まず漫画雑誌の方はデフレ下でも買う人(読者)がいる(逃げない) から値上げが可能だったのでしょう。これに対して、食品などのモノは「上げられなかった・上げにくかった」と考えると景色が見えやすい。

一方の国立大学授業料はどうか。現在入学金も入れると4年間で約240万円、医歯薬で6年間なら約350万円と、かなりの高額になっています。それでも値上げできたのは、上げても入る人(入学者)がいる(逃げない)からでしょう。学歴主義から逃れられない人たちが多いとも言えますが、こんな金額を借金(奨学金という名の学生ローン)してしまうと後で大変な目にあうのは必然です。

払うお金の額に対して厳しい目を向ける年齢層相手では値上げが難しいが、未成年や若者相手なら大丈夫という財政当局の判断もありそうです。学費を値上げしても選挙の票には影響がないと政治家もタカをくくっているのかもしれません。しかし、学費を無料にしたり低額にしたりして教育に力を入れている国は世界に結構あります。日本のように高額の授業料を若者から取り立てている国が普通という訳ではありません。大学は独立法人化となって国からの補助金を減らされ続けており、いずれにしても教育にお金をかけない国の未来は暗いのではないでしょうか。

今後はすべてのモノが値上がりし、失われた30年ないし35年が一気に様変わりします。それに耐えられるのか、それとも落ちこぼれて衰退の道を歩むのか。「(投資の勉強をしていない)日本の40代以上は日本以外の場所へ今すぐ引っ越しなさい」と云うジム・ロジャーズさんの忠告は大袈裟な感じですが、40年後に日本が相当ヤバクなるという彼の推測には注意を払うべきだし、40代以上だけでなく40代以下の人も安穏とはできない時代が来そうです。