雨水利用にかかる費用

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新緑の美しい季節真っ盛りですが、すぐに梅雨がやってきます。でも、自宅で雨水利用をしていると雨もそれなりに愉しいもの。その雨水利用ですが、時々私宛にコストの問い合わせがあります。新築だが雨水利用をする場合、いったいいくらの費用がかかるのか、既築の場合はどうなのか。私の知る範囲で、その回答を整理しておきましょう。…
(追記: 下記の2)雨樋に比較的容量のあるタンクを設置の費用について最近では大幅に安価にできるようになりました。

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拙宅の雨水利用はHPで記した通りで、装置的にみて3つあります。

安いものからいえば、雨樋にパッコン(製品名、同等品は他にもあり)をつけるもの。これなら工事後の手作業でできますから、パッコン代の5、6千円(1個当たり)。気軽に雨水利用をやってみようという方には費用的にもリーズナブルです。また、既築住居でもすぐにできます。雨樋を切り取る作業は糸ノコでもカッターでも可能ですが、銅製やステンレス、あるいはアルミ製の雨樋の場合には金属カッターが必要なので少し厄介でしょう。
この雨水を酒樽や大型の鉢や壷で受けて水を溜めるということになりますが、余ったバケツ容器のようなものを使うこともできます。この材料もひとそれぞれですね。

2番目は、雨樋にドラム缶様のタンクをとりつけるもの。こちらは製品によって値段はさまざまです。ポリエチレン製やステンレス製、地上置きタイプ、地下埋め込み可能タイプ、実にたくさんの製品が既に出回っています。当然値段もさまざまですが、ポリエチレン製で濾過装置込みで7,8万円程度くらいでしょうか。
タンク容量も200リットル前後からもっと大きいものがあり、水が入ると相当な重さになるため、タンク土台や基礎をしっかり作る必要があります。そうでないと、タンクが傾いたり、沈下したりしますから。
この工事を自分でできるかどうか。できるならコンクリートブロックや少量のセメント代で済みますが、自分でできないなら、大工さんや設備屋さんに依頼しなければなりません。すると、その分手間賃がかかります。新築の場合なら、本体建築工事かあるいは外構工事といっしょに発注すれば、それほどのコストはかからないでしょう。既築の場合でも、人件費+材料消耗品費+経費で3〜5万円前後で交渉してみて下さい(タンク代別)。当たり前ですが、見積もりをとって相談するのがベターです。

さて、拙宅で一番大がかりで費用がかかっているのは、10本強の雨樋を一カ所に集めて地下タンク1立米に入れるものです。このコストをはじくのは簡単ではありません。というのも、家それぞれで雨樋の配置も違いますし、タンクとの距離や使用する機材によって値段に大きな差が出てくるからです。したがって以下の記載は拙宅の場合の話だとご理解下さい。

拙宅の設備内容を雨樋側からみると、まず雨樋の縦樋をタンクまで横引きしてくる配管があり、さらにタンクに入れる前に簡易沈殿槽を置いています。これは屋根ゴミ対策ですが、使用したのは業務用排水処理に使うトラップ槽です。この沈殿槽代は安くありませんので、別のアイデアで他の装置を使う余地があるでしょう。(他にいいアイデアがあれば是非教えて下さい)

次に雨水タンク。拙宅はポリエチレン製で1立米容積の地下埋め込み。これは黄色の農業用の散水タンクを流用しました。また、ポリエチレン製にしたのは、地下置きで紫外線による合成樹脂の劣化がほとんどないだろうとの判断です。タンク自体は3万円前後から手に入りますが、基礎土台工事に埋め込み費用がそれ以上にかかることにご注意下さい。
このタンクには水道水補給用の配管がついています。拙宅では雨水だけでなく風呂桶の残り湯もタンクに入れますので、ふだんは水道水の補給ラインは止めています。このラインを使うのはタンク清掃時の水張りくらいですが、これもバケツ人力でいくというのであれば、コスト削減で止めることもできます。でも、水張りラインは作っておく方が無難です。

この雨水タンクから井戸ポンプを用いて、1Fと2Fのトイレ2カ所へ水を送ります。ポンプは、トイレ水洗レバーを上げた時だけに働く定圧ポンプですから、電気代はほとんどかかりません。ポンプ代も揚程により違いますが、普通の2F屋までなら7万円程度でしょう(設置費別)。厄介なのは、水道配管とは別個にトイレへの配管を用意しなければならないこと。新築時なら比較的簡単ですが、既築の場合は壁に穴を開けたりする工事もあり、なかなか大変です。でも、見栄えを気にしないなら、外壁に管を這わせて、トイレ部分の壁に対してダイレクトで抜くという方法もあり、これなら費用はかなり安くあがりますし、躯体強度への影響もあまり考えなくて済むでしょう。

最後は、タンクが雨水でいっぱいになった時のためにオーバーフロー配管を設けています。降水量によっては一気にタンクを満たします。タンクがあふれてしまうと困るんで、上部横に配管を設け、それを通常の雨水排水ラインに合流させています。

拙宅では上記に加え、遊びの要素を入れています。それは手押しポンプ。昔懐かしいガチャポンですが、これは単にノスタルジックというのではなく、地下タンクの水をくみ上げるために設置しました。というのも、ふだんは電気仕掛けのポンプでトイレ用水にしているのですが、庭の水まきなどに使う時には別ラインで水を取り出さなければなりません。専用の電動ポンプをつけることも考えましたが、水まきにそこまではいらないだろうと考え、手押しポンプにした次第です。もう少し歳を重ねて手汲みが面倒になったら電動ポンプに切りかえるかもしれません。
しかし、この手押しポンプは客人とくにこどもさんたちには大好評です。最近見かけなくなったというのもあるでしょう。あるこどもはドラえもんで見た見た!といって喜んでいましたが、あの漫画で出てくるのかどうか私にはわかりません(苦笑)。

以上、簡単に整理してみると、雨水利用にかかるコストは以下の通りです。
1)雨樋1本にパッコン設置、貯留装置は独自・・・・・・・・5、6千円から
2)雨樋に比較的容量のあるタンクを設置・・・・・・・・・・・10万円前後〜
3)雨水タンクを設けてトイレ水洗用水に利用・・・・・・・・・60万円前後〜
    (拙宅の場合、水道配管費用除く)

1)2)は既設住宅でもいっしょです。3)は新築時であれば本体工事といっしょにしてコスト削減できますが、既築時であれば新規の配管コストを考慮すると、場合によっては100万円オーダーの工事になるかもしれません。

追記:下記の2)雨樋に比較的容量のあるタンクを設置の費用について、小型軽量タンクが出回るようになったため、最近では大幅に安価にできるようになりました。拙宅でも追加しましたのでその実例を紹介しています。2017年4月記

お金の話は工事仕様と段取り工程で数倍に開くので、上記の数字はひとつの参考例としてお考え下さい。いずれにしても、工事業者と十分に相談の上、納得のいくようにするのが一番です。かかった費用は水道料金の減少という形で少しずつ戻ってはきますが、それより何より「雨水利用って楽しい」という心理的効果の方が我が家では大きなメリットになっているような気がします。