不法と違法

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こちら新聞テレビを見ないのでネットに出てくる話題から炎上ネタを知ることになるのですが、今年もいろいろ気になる話がありました。そのうち、不法と違法、窃盗と窃取などについて少し。

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ときどき出てくる芸能人の不倫報道。最近は政治家のも登場します。理屈でいえば、不倫は道徳倫理に照らせば問題ありですが、そもそもプライベートな話であり、違法行為ではありません。ところが不倫を不法行為だと喧伝する人たちがいるので話がややこしい。

先日友人曰く、国民民主党代表の玉木氏の不倫問題に関して相手の女性だけが社会的責任を取らされ、男の方は党首のままというのは納得できないとのこと(その後、役職停止3ヶ月の処分)。おまけに不倫は不法行為だ、ネットにそう書いてある!と云うのです。

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ググってみると不倫は不法行為、あるいは不法行為になる可能性・・・だと出てきます。ホンマ? じゃ、どんな法律に反するのでしょうか。

ネットで根拠になっているのは民法709条。これは損害賠償を規定する条項で、不倫によって夫婦関係に損害が発生した場合などはそれを償うべきと言っているだけ。夫婦間のプライベートな補償の話であり、アカの他人が横からワイワイ騒ぐ話ではありません。

ただし厄介なのは、道徳倫理に反する行為も不法行為という言葉で説明する場合があること。だから、不倫を不法行為だと説明してもあながち間違いではないのですが、道徳倫理に反しても法律で罰せられるわけではありません。

いずれにしても、この件、グーグル検索だけでわかったような気になるのは危険です。要するに不倫はプライベートな話なので公的な責任問題とは別だと認識しておく方がいい。

芸能人が不倫問題でコマーシャルを外されたり損害賠償請求されたりするじゃないか、と言う人もいるでしょうが、これは民事上の話。不倫がバレて世間的な信用を落とすと、その芸能人が宣伝している商品や企業の価値まで下がってしまうので、その損害やコマーシャル費用を弁済させようという賠償請求です(コマーシャルの契約条項に違反しているという話)。玉木問題で女性側が早々と観光大使か何かを解任されたのは、行政や企業との契約関係の中での契約違反という枠組みで考える話になります。

政治家は有権者に選挙で選ばれた立場ですが、「違法行為をしない」ことは当然としても、プライベートな問題で政治的責任を追及されるべきかどうか、有権者として考える必要があるでしょう。「私は不倫しません」を選挙公約としていた場合は別でしょうけど。

その昔、フランス大統領のミッテランが愛人問題(不倫)を記者会見か何かで問われた時、「それが何か?」と切り返しました。プライベートな話とパブリックな話をごっちゃにするなと反論したのでしょう、きっと。

念のために云えば、こちら不倫に賛同しているわけではありませんし、他人の不道徳なんてど~でもいい話じゃないですか。でも、そんなプライベートな問題をパブリックな場に引き出し、新聞TVやSNSで公開処刑にするのはおかしい、と考えています。騒ぐ人たちには何か別の目的があるのか、あるいは炎上商売ネタなのか。以上、今年気になったことの1つでした。