ハゲタカは飛んでゆく

.Books&DVD…

ハゲタカは飛んでゆくラリー・S・ジュニア 著 高木ハジメ 訳 実業之日本社 2003.01.14
泥棒国家の次はハゲタカ本にいきましょう。米国人ストラテジストが書いたという米国人のホンネを追及したものです。…

・・・・・・・・・・・・・・・・
タイトルを最初に見たとき、「エル・コンドル・パーサ」、つまり「コンドルは飛んでいく」を思い出しました。あっちはコンドルだけど、こっちはハゲタカ、バルチャー(vulture)です。ハゲタカといえば、ハゲタカ・ファンドを思い浮かべる人もいるでしょうが、この本のハゲタカは寓話化された某国の支配者層を指しています。

登場国家は、タカ帝国、ハト王国、カバ人民共和国、クマ帝国、ハチ王国。
ハト王国の歴代首相の名前は、トノサマ、ケンドー、ヘーセー、ズンドー、そしてカンドー。もうおわかりですよね? ハト王国がどの国で、登場する首相が誰のことだか(苦笑)。本では脇役に上記の他国も登場し、ハト王国をタカ帝国がどうやって陥落させていくか、その手練手管を駆使した戦略戦術が時間を追って示されていきます。

ハト王国の国民は大人から子どもまで「ブーム」に弱い、冷戦時代は「カバ封じ込め作戦」だったが、これからは「市場開放」させ、ハト王国を解体に追い込め、カンドーの構造改革をプレーアップし、適度の円安局面を与え、為替戦略に目がいかないようにしろ、…。

上記の記載が何を指しているのか、実際に起きた過去の事件がどう取り上げられているのかを併せてチェックしながら読めば、さらに理解が深まります。でも、著者の狙いはひとつ。本の帯にもあるように、いつまでもアメリカに騙されていいのか?、これでしょう。

この本は巷に出回る陰謀本ではありません。まともな社会批判の本です。先のフルフォードさんの本が日本の問題点を洗い出すことに専念したものだとすれば、こちらは米国人の立場からみた日本と米国との関係の明確化という云い方ができるかもしれません。フルフォード本よりも随分軽く感じるのは、テーマを寓話仕立てにしたことで読みやすくなったせいでしょう。短時間に現代のカラクリを知ろうと思う人にお薦めです。