都多摩高校のプール事故判決

プール事故

以前、東京都立多摩高校(青梅市)のプール事故に関して少し触れていましたが、昨年7月30日に地裁判決が出ています。かなり遅れたコメントになりますが、少しばかり私の意見を添えておきましょう。


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毎日新聞2003年7月31日東京版によると、首の骨を折って死亡した生徒の両親が「プールの構造や指導教諭に問題があった」として、都に約1億円の損害賠償を求めた訴訟で、2003年7月30日地裁八王子支部は約4450万円の支払いを命じたとのこと。
両親側は、プールの構造上の欠陥と現場教諭の責任を問いかけていたが、判決では、教諭の指導上の過失を全面的に認めただけでした。

問題となったプールは、「スタート台前の水深が約1・2メートルと浅く」、これに加えてスタート台(いわゆる飛び込み台)がついていると、どうなるか。背の高い生徒ならプール底に頭をぶつけてしまうのも当然です。このことは拙著でも繰り返し危険性を指摘してきたところ。でも、裁判所はその非を認定しませんでした。なぜでしょうか。

もし、プール構造の非を認定したとしましょうか。そのとたん、問題が一つの学校に留まらなくなり、当局側としては非常にまずいことになる。即、教育委員会の責任や国の責任をも問うことになりますから、サラリーマン化した裁判長では無視する方が得策だという判断が働くのかもしれません。でも、この裁判所の無作為判決が、この国で毎年プール事故が繰り返される一因となっているのではないか、と私は云いたい。別のプール事故判決へのコメントでも指摘した通りです。

都教委は、「この事故などを踏まえ、01年度からスタート台を使った飛び込みを授業で禁止し、深さ1・35メートル未満のプールについて、固定式スタート台を撤去する改修工事に着手」とのことですから、本当の原因がどこにあるのか、ある程度認識しているようです。それなら、なおのこと、亡くなった命が無駄にならないような判決が出るように、都も尽力すべきだったのではないでしょうか。

さて、青梅市といえば、もうひとつ忘れてはならないプール事故があります。1999年7月23日東京青梅市の第一小学校の生徒が排水口に吸い込まれて死亡した事件です。こちらも根本的な事故責任が問われることなく、現在では「プール事故はなかった」という感じになっていると関係者の方から聞きました。なお、この事故の概要は、青梅市会議員木下かつとしさんのHPで見ることができます。

現場教師の過失責任で誤魔化する学校プール教育では、今度またどこかで悲惨な事故を引き起こすでしょう。夏になりかけると、毎年それが心配です。

(この判決関連のお話は青梅市のT様よりご連絡がありました。ここにお礼申し上げます)