AIが書いたAIについての本 を読んで考えた・・・

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前回に続きAIの話。現在登場しているAI応答システムはたくさんありますが、ニュースになるのはなぜかChatGPTばかり(最後尾のおまけ参照)。そこら辺に何かキナ臭いニオイがしますが、それはさておき・・・。先週本屋をぶらついていたら、『AIが書いたAIについての本』(フローラル出版 2023)なるものが目に入りました。監修はJames Skinnerさん、でも著者はAIという触れ込みです。早速入手して読んでみました。
(お断り:昨今はChat-GPTをChatGPTと表記するようになったのでこちらも変更)

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新聞テレビ雑誌ではChatGPTの登場で「既に世界は変わった」と囃し立てていますが、ホンマでしょうか。

前回、拙著に関するChatGPTのデタラメさを紹介しましたが、厄介な話はもっと広範に起きています。例えば、図書館に存在しない本を探し求める人が最近出てきたそうな。理由は存在しない著者や本名をChatGPTが提示するかららしい(あらら)。困ったこっちゃ。

さて、今回紹介する本の著者は人間じゃないらしい。監修者はヒトなのですが、本をしたためるにあたって使ったツールはAIツール。ChatGPTを初めとして Quillbot、Google Translate、Dall-E、MidJourney.Dream AI、Lexica、InstantArt、Grammarly、Clipping Magic、Tomeとなっています。複数のAIツールと画像生成、クリッピングや文法チェック等々のツールを使って、ヒトを介さずAIがAIについて書き下ろしたというわけです。

それにしても、AIがAIの本を書くとは時代もここまで来たかぁ〜と驚きます。1980年代に流行したエキスパートシステム型AIは廃れ、現在はニューラルネットなどを使った機械学習タイプになったのは知る人ぞ知る話。放射線画像読影は既に実用化され、病理診断も早晩実用化されるでしょう。娯楽でもチェスや将棋はマシンに勝てない時代になりました(日本将棋連盟は・・・)。でも実生活の場面ではまだまだ。目的を限定し有効性を確認できる範囲で使用拡大というのが今後の方向でしょうか。


先の本ではこれからやってくる世界の様相をAI自身が語っています。トレンド追いで囃し立てる人たちの言い分はともかく、少し堅苦しい精緻な論理展開がAI風でしょうか。でも自らの問題点にも肉迫し、これから私たちのセキュリティやプライバシーが脅かされるのは必至だというのがよくわかります。

だって倫理観や道徳の観念がないAIには当然ながら善悪の区別がありません(しません)。また本の最後の方で、「従来の教育システムは批判思考や問題解決よりも丸暗記学習に重点を置いてきたのでAIの課題に対処する準備が整っていない」とAIが語るのはとても重い問題提起。この本を読みながら(先日のようにお笑いなんて云ってられない)、空恐ろしさを感じる次第です。

おまけ。AIツールはOpenAIのChatGPTだけでなく、マイクロソフトのBingやグーグル系のBardなどもあります。

(出典はDIME 2023年6月号)