OT法よ、さらば

Water

  水中の残留塩素を測定する方法にオルトトリジン法(以下OT法)というのがあります。測定精度に問題が多く、試薬のオルトトリジンが発ガン性物質であることから、心ある研究者や私などは本方法をやめるべきだと主張してきましたが、このOT法、やっと公定法から消え去ることになりました。

 オルトトリジンという試薬を使って残留塩素と反応させ、呈色した黄色の強さで濃度を測ろうというものです。水道当局だけでなく、プール業界その他残留塩素を測定する必要のある場所では広く一般的に使われてきました。しかし、この測定法では低濃度域の精度が悪いこと、結合塩素もいっしょに拾ってしまうこと、それに発ガン性物質であることなどの問題も知られていました。

  より精度が高く人体にも比較的全であるとされるDPD測定があるのになぜOT法が生き残ってきたのか。私にはわかりませんが、業界の都合でそうなったのか、変化を嫌う関係者がいたのはたしかでしょう。でもやっとそれが今になって消えるのはいったいなぜでしょうか。

  私の友人の一人はこう推測しました。厚生省が労働省といっしょになり、厚生労働省となる。労働安全法絡みで労働省がチェックしていた特定化学物質を旧厚生省派は今まで無視してきたが、厚生労働省となればそうもいかなくなった。それで今回のOT法廃止に繋がったとのこと。当たっていそうですね。他にも労働省が問題にしていて厚生省がシカトしていた危険物質はいくつかあるので、そちらも期待したいと思います。

  さて、OT法を使っていたのは水道当局だけではありません。その昔、トリハロメタンを問題にする住民団体が蛇口の残留塩素を測定するのにOT法を使っていました。ある時私が批判すると、「自動車に問題があっても車に乗らないわけにはいかない」等と意味不明な言い訳をしてOT法を使い続けていました。でも結局、そういった運動団体で今でも水道問題に取り組んでいる所を私は知りません。 トリハロメタンのクロロホルムの危険性がそれほど問題でないことが数々の動物実験で立証された現在、騒ぐだけ騒いでおいてほったらかしというのも何か奇妙なものを感じます。

さて、市民向けの簡易水質試験キットは、10年以上前はOT法でしたが、いつからかDPD法になっていますので、こちらは安心。
OT法よ、さらばです。

*「水道水質に関する基準の制定について」の一部改正について
   厚生省生活衛生局水道環境部長 生衛発第1876号 H12・12/26  ’