見送りというおもてなし

.Travel & Taste

先日まで深く考えていなかった、あることに気づきました。お見送りのことです。ある旅館で会計を済ませると、「はい、これでおしまい」とばかりの対応で、荷物をまとめて退出する時にはお見送りなし。やけにドライな対応に、他の旅館とは違うなぁ、そういえば外国では・・・等々と改めて考えること多々。

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私が時々訪れるレストランやお寿司屋さんあるいは料亭ではお見送りがあります。退出時にお店の玄関口まで大将等が見送って下さるのです。

また、よく出かける温泉旅館の例でいえば大女将が清楚な着物姿でお見送り。もう相当な高齢なのに背筋がピンとしたお姿に流石と感心しています。私の経験の範囲で云うと、他の老舗旅館もだいたい同じ。たかが一介の客に何もそこまで対応しなくても・・・と恐縮することもしばしば。お店が忙しい時には結構ですと願いすることもある位です。

これが当たり前ではないことに気づいたのは先日ある旅館に泊まった時のこと。1日一客しか泊まることができない宿でしたが、会計済ませたらもうおしまいとばかりの対応。こちら何か粗相でもしたんだろうかと思ったくらいでしたが、どうやら多忙な昼食の支度に一刻も早く取り組みたいようでした。

その時思ったのは見送りという行為の大切さ。お見送りは単なる挨拶ではなく、「お楽しみいただけましたか。良ければまたお越し下さい」という相手側のメッセージが強く込められていることを改めて感じた次第です。

てなことを考えていると、ヨーロッパの星つきレストランではどうだったか。そういえば、見事にドライだったなぁ。記憶を辿ると、シェフやお店のマネージャから見送りを受けた記憶がほとんどありません。会計を済ませばそれでお仕舞い、美味しい食事を提供する契約は終わった、後はご自由に・・・というのでしょうか。そういう意味では、先の見送りなし旅館はヨーロッパ的です。

要するに、見送りの有無は相手側のポリシーの問題。良いか悪いかで評価するような筋合いはなし。でも、あるかないかで受け取る側としての印象はこうも違うものなのか。それとも私が日本人だからそう思うのか。どちらが客側に心地好いか、私が云うまでもありません。改めて日本のおもてなしの真髄に触れた気分です。

それにしても急に冷え込んで拙宅のヤマボウシは一気に真っ赤。もうすぐ本格的に冬です。