音の色

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音の色で音色(ネイロ)。どうしてこんな言葉があるのかいざ知らず、でも先週聴いたピアノ演奏には色を感じました。いや、正確には淡い色あいの光の輝きや揺らめきを感じたというべきか。オトは物理的な周波数の集合体ではない、音色とはよく云ったものだ、なるほどなぁ、と改めて感激した次第です。

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先週8月30日晩、連れ合いのたっての希望で向かったのは大阪のシンフォニーホール。全国各地で大雨が降り注ぎ多大な被害をもたらしている最中で、関西も至るところでJRの運休が発生。でも、こちら運良く大阪まで行くことができました。

演奏は辻井伸行さんのピアノ。ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール優勝10周年記念と銘打ったコンサートで、既に6月から東京で2回、福岡、札幌、そして8月末が最後の大阪という日程でした。

この日はソロ、弦楽四重奏とのアンサンブル、そしてセンチュリー交響楽団との共演という三本立て。どれも素晴らしく聴き応えのある演奏でした。ホンマに素晴らしい。

10年前に辻井さんが世界的コンクールで優勝した時、メディアでは演奏の内容よりも目が見えないピアニストとして取り上げられました。でも、見えようが見えまいが関係なし。彼の演奏が完璧なのは一度聴いたらわかります。むしろ、見えないが故なのかと思わせるほど、彼のオトには繊細さを感じてしまうくらい。

その辻井さん、ソロはもちろんいいのですが、ソロで弾くよりも弦楽四重奏やオーケストラといっしょに演奏する時の方が楽しそう。音が余計に繊細にダンスしているように感じるのは私だけではないでしょう。そういう意味で今回の三本立ては面白く楽しめました。

それにしても、10年はあっという間。クライバーンさんは既に他界しましたが、この10年辻井さんの精進は留まること知らず。

この日の演奏を聴きながら、不覚にも私は光の揺らめきというか蠢きというか、そんなものを何度も感じてしまいました。せせらぎの水面に光が反射する様、木漏れ日のキラキラ、そして緑の平原を通り過ぎていく風の輝き等々。ピアノの演奏では初めて。

色はといえば原色や極彩色ではなく、淡い淡い感じなのでイロを感じたというのは外れているかもしれません。でも少なくとも光の蠢きを感じたのです。以前「ピアノの森」という漫画で、主人公の演奏中に森を感じるという下りが何度も登場していましたが、まさしくあれによく似た感じ。ホンマにそういうことってあるんですね。

とにかく感動の夜でした。

蛇足ながら、当日会場は満席で9割方は女性。トイレ設備が十分に対応していないので、休憩時間の女性トイレは超長蛇の列(男性トイレはガラガラ)。長蛇の列はあまりにもお気の毒。あれ何とかならんものですかね〜。この手の演目の時にはトイレの男性女性比率を自由に変更できるようなトイレ設計ってないのでしょうか。