家づくり実践記(4):あぶないシステムキッチン

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日本消費者連盟関西グループ『草の根だより』(98/12月号所収)

今月もホルムアルデヒド関連の話題です。世の主婦(夫)族をして一度は欲しいと思わせしめるシステムキッチン。しかし、あれって、ほとんどの製品がホルムアルデヒドを大量に発散する危険な設備なんです。正直なところ、私自身つい半年前まで詳しい実態を知りませんでした。

キッチン設備というのは、流し(シンク)に水栓、調理台、コンロやオーブン、それに食器や調理具を収納する棚や引きだし等で構成されています。これを連携させて機能性を高めたと称するのがシステムキッチン。別にシステムでなくても単品を組み合わせれば同じことですが、色、デザイン等を合わせただけでなく、消費者の購買欲をくすぐる一見便利そうな機能をちりばめている所が心憎い。しかし、その見えない部分にはホルムアルデヒドいっぱいの素材が使用されています。
天板はステンレスかもしれませんが、その下は合板やパーティクルボード(木材粉砕片をホルムアルデヒド系接着剤で固めた板)、それにファイバーボード(木材繊維等を接着剤等で成形したもの)がほとんどです。引き出しの横板は?底板は?棚板はどんな素材でしょうか?そこにも先の有害接着剤で成形加工したボードが使われているのが普通です。住居内でのホルムアルデヒドの測定例を見ると、キッチン廻りの濃度が異様に高い傾向がありますが、その理由はキッチン設備から大量に放出されるからに他なりません。既に使用している人は、通風換気をしっかり行って、危険濃度以下になるように努めるしか方法がありません。
困ったことに住宅メーカーやキッチンメーカーは、今まで全くこの問題を無視してきました。TT社やI社、P社、S社、名だたるメーカーでは、現在でもホルムアルデヒドいっぱいの設備を販売しています。ウソだと思う人は数社ショールームに行って、キッチンの引き出しや棚を開け閉めしてみて下さい。ホルムアルデヒド臭を感じたり、目やノドが痛くなること請け合いです(哀)。
現在最も安全なシステムキッチンを謳うTY社では他社のようなホルムアルデヒドいっぱいの合板やボードを避けた商品を販売していますし、C社ではステンレスをふんだんに使った新製品も最近売り出しました。しかし、よくよく確認してみれば底板や天板下部は、E1規格(ホルムアルデヒド放出量1.5mg/l以下)のボード。従来よりもホルムアルデヒド放出量を押えた商品かもしれませんが、発がん性を考慮すれば、まだまだ「問題あり」と言わざるを得ません。
こうした危険なキッチン設備に替わるものはあるのかないのか。既製品は先に示した通り。無垢材で構成したものは手が出ないほど高価。『健康住宅作り』でよく紹介されている製品も、天板下はホルムアルデヒド含有の合成ボードを使っています。困惑していると、ひょんなことでレストラン等の厨房設計を仕事にしているお店なら、全くオールステンレスでシンクなり棚なりを作れることがわかりました。ステンンレスにもいろんな種類があるので注意は必要ですが、危険なモノを掴まずに済む方法はありそうです。ホルムアルデヒド放出量が少ないE0製品で良しとするか、全く排除した設備にするか、それは消費者が決めること。でも、製品の実態を知らずに病気になる危険性を買うのだけは避けたいものです。
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試行錯誤の設計の後、確認申請が先日通り、やっと工事を開始することになりました。木材をふんだんに使い、土壁を塗るという仕様なので最低でも半年はかかりそうです。来年は工事進捗に併せて、脱塩ビ素材の水道配管設置、太陽エネルギーの活用、雨水等を使ったトイレ用水なんかを紹介できるはず。写真や詳しい話は私のホームページ http://arita.com/に載せますので、アクセスできる方はそちらもご覧下さい。