M4の思い出

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M4の話が出たついでに私の思い出を少し。最初にM4を見たのはいつだったか、その時何を思ったか、当時LEICAに惹かれなかった訳は・・・、なのになぜ数年前からLEICAに嵌まってしまったのか。大袈裟にいえば自分史の整理(笑)。

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写真はLEICA shop(AUSTRIA)から

最初に見たのはいつか。これはよく覚えています。1985年6月8日。日にちまで出てくるのは、その場所の写真がアルバムに残っているから。場所はオーストリアのザルツブルグ。新婚旅行の時、かの地の観光ツアーで同席した日本人が使っていたのがM4でした。

とはいっても、LEICAを見たことがない私にM4だとわかるはずはありません。その人のカメラがそれまでに見たことがないものだったこと、おまけにフィルム巻き戻しノブが斜めになっておりフィルム交換時にはカメラの底蓋をパカッと取り外していたこと等々、何もかもが初めて見るものだったため、ありゃ何だと後で調べてM4だとわかったのです。

 

LEICAという高価なカメラがあることは知っていましたが、目の前の姿カタチ佇まいは私の予想を超え、高級感漂う逸品でした。ただ、その時はへぇ~そんなカメラがあるんだ程度の印象。私自身は当時使っていたNIKONに充分満足していたし、関心事は他にもたくさんあったのでLEICAのことなど頭に入ってこなかったというべきところかもしれません。欲しいのに買えないというのであればずっと悔いを残しますが、そうではなかったというわけです。

タレントの安田美沙子さんはM4使い(CAMERAマガジン2014/7号より)

そのLEICAが私を悩ますようになったのは、それから26年後の2011年。RICOHのGXRにLEICAレンズが付けられるA12マウントが出てきてからのこと。一度は関心を失ったLEICAですが、昔の記憶が甦ったといえばそう云えなくもありません。試しに中古レンズのSummicron 50mm(1990)をつけてみたら、なんとまぁ!!!、私の知らない世界がそこにありました。こんなものが世の中にあるのか~~~~~ってな感じ。

確かにNIKONもよく写ります。でもそれとはちょっと違う。NIKONのは端から端まで綺麗に写るんですが、LEICAが写し出す立体感には名状しがたいものあり、というのは言い過ぎでしょうか。とにかくびっくり。もちろん、これは個人的な印象ですから絶対的評価ではありません、念のため。

RICOHのGRレンズはLEICAに似ていると云う人がいますが、テイストはその通り。でもやはり違う。LEICA、LEICAって言うはずだ。決して金持ちの道楽ってわけじゃなさそう・・・・・。そんなこんなで、最初にLEICAレンズを使った時の驚きを昨日のように覚えています。

レンズがこれならカメラ本体といっしょにするといったいどういう絵を表出してくるのだろうか。自分が望んでいた写真表現というか、探し求めていた写真が得られるかもしれない、そんな気になってきました。謂わば、ほとんどビョーキ(爆)。

問題は値段です。LEICAは気軽に手が出せません。なぜ高いのか、それともただ高いだけなのか、他のメーカーとどこがどう違うのか、だいいちそんなものを使う資質が自分にあるのか、思い込みがキツイだけではないのか等々、考え出すとキリがありません。

織作さんの手元にあるのはM3?(通販生活2017春号より)

さてどうするか。人生は一回きり、欲しいと思ったら迷うなと思う一方で、カメラがなくても死ぬわけでなし、カメラに大枚はたくよりも他にお金の使い道はあるのではないかとブレーキがかかります。

こちら車や時計にお金を使う趣味はありませんからカメラにお金をかけてもいいじゃないかと思っても、無駄金になりはしないか、ステイタス狙いの邪心ではないのか等々。あれこれ買う理由と買わない理由をそれぞれ列記して、何度も何度も書いたりして繰り返し考えました。

悩んで悩んで悩んで、結局2014年にモノクロ専用機の M Monochromをゲット。結果からいえば、自分の知らない世界に一歩足を踏み入れ、満足感はとっても大。使ってみてしみじみそう感じます。

NIKON他日本製カメラが完全デジタル化し、まるでカメラロボットになってしまった現在、レンジファインダーでオートフォーカスなし、絞りとシャッタースピードは自分で決めるというLEICA M型は唯一無二。値段が高い安い云々というのは個人の資産配分をどうするかという観点で捉えるべきところです。

M4を最初に見た時もっと深く追及し、早めにLEICAを手に入れていたら私の人生はどうなっていたのか。今は昔で過去は過去ですが、今でもザルツブルグでの記憶が鮮明に甦る位ですから、あの時あの場で何かのタネが頭に植え付けられたのかもと思うと意味深です。とにもかくにも、一歩踏み出さないと自分の知らない世界は未知のまま、というのはカメラに限らず一般化できる話だなぁと改めて納得する次第。