山岳信仰の桜

.Travel & Taste

sakura150406c吉野の桜を観たのは今回初めて。連れ合いが週末のスケジュールが急に空いたから吉野の桜を観に行きたいと突然言い出しました。TVで観た記憶から、あんな混み混みなところはイヤだよ〜と抗弁したのですが、日曜晩なら温泉にも泊まれる等というアイデアに絆され、日曜日に吉野へ。

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吉野の桜といえば、古今集や新古今集をはじめ、いろんな作品に登場します。また静御前が義経を想って詠んだのもここ、吉野の桜だったことなどで蘊蓄話には事欠きません。

その桜、いつ頃から植えられてきたのか。調べてみると平安時代かららしい。飛鳥時代の修験僧の役小角がこの地で修行を積んだ時、蔵王権現像を彫ったのが桜の樹だったことで御神木となり、後々の植樹に繋がっていったというから歴史は古い。山にはお寺や神社がいろいろありますが、各宗派が山岳信仰にあやかっているのでしょう。


sakura150406bさて、今年の桜は4月になって開花し、5日現在で下千本は七分咲き、中千本は五分咲き、上千本は三分咲きとのこと。ピークはおそらく10日前後とのことで、客足は少なめ。5日の日曜日は折からの雨予想も加わり、ピークには2時間待ちなどと云われているロープウェイもすぐに乗れたし、目抜き通りも混み混みではありませんでした。桜見物をあらかた終えて宿に入り、しばらくすると雨。雨の前に散策できてラッキ〜でした。(右は上千本からの眺め)


sakura150406fそれにしても山の斜面一面に植えられた桜は圧巻です。ピーク前とはいえ、なかなかのものでした。日本全国に桜の名所は数多くありますが、山一面の桜が楽しめるのは少ないのではないでしょうか。おまけに泊まった宿の露天風呂のド正面は中千本の桜ですからお風呂好きにも二重丸。

とくに驚いたのは夕方や明け方に出てくる靄の中の佇まい。雲海の中に浮き沈みする桜の様は幽玄で素晴らしい。横山大観の「生々流転」の一コマのようでもあり、東山魁夷の白馬が出てきても何の違和感もなし。逆にいえば、彼らが描き出したのはこういう世界だったんだなぁと思う次第です。(写真は中千本側から上千本を臨んだもの)


sakura150406moya先に紹介したのはモノクロ写真でしたが、カラー写真でも似たような雰囲気です。こんな幻想的な桜は観ない限りはわからないものですね〜。(宿の部屋の正面は中千本)


sakura150406eおまけ。吉野の山野草屋の女性が目抜き通りのことを「国際通り」と云っていました。というのも、観光客の多くが外国人であるから故。特に香港・台湾が多いらしい。最近の京都もそうですが、アジア系の観光客がいないと客足はどうなることやら。日本の観光地はもう外国人抜きには語れない、これが今日的状況です。