Mentonのコクトー ニース その11

.Travel & Taste

B7_coctrさて、今回の旅も終盤です。次の目的地はMenton、フランスとイタリアとの国境の町です。レモンで有名な場所ですが、ここにはコクトーの絵画がたくさん。当時の市長が市庁舎の壁画をコクトーに依頼したことから始まった関係のようですが、おかげでマントンがコクトーの時空を超えた作品を提示できることになったのは得難い財産です。

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コクトーと云えば詩人、作家、映画監督と肩書きいろいろ。彼の詩で私が思いつくのは、

 私の耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ (堀口大學訳『コクトー詩集』より)

位しかありません。ところが、今回の旅行でコクトー絵画をたくさん観たせいか、私の中のイメージは、ピカソやマチスと同列の画家になってしまいました。

B0_coctrそのコクトーをメインにした美術館がニースの東、Menton(マントン)にあります。VenceからバスでまずCagnes sur merへ。そこから列車(SNCF)に乗り換え、ニースやモナコを素通りして約1時間で到着。

とりあえずホテルに荷物を置き、中心街にあるコクトー美術館へ。この町には2つのコクトー美術館があります。1つはコクトー自身の発案による要塞美術館。その名の通り、城砦の中に設けられた展示ルームです。もう1つは2011年に誕生したばかりのコクトー美術館で、ある収集家の寄贈品を元にした現代的感覚の溢れる美術館。どちらも見所いっぱいで楽しめます。


B2_coctrまず要塞美術館へ。海岸べりの城壁の中に作られたもので、入り口の外壁はコクトーの絵柄が砂利で構成されています。そして、入ってすぐのフロアの床面も作品なのですが、最初は全く気付きませんでした。帰りに階段を下る時、見下ろした視線の先にトカゲの姿を見つけた時には少々びっくりです。



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ここは、こじんまりした空間で展示数も少なめ。30分もあれば一通り楽しめます。彼が詩人だと知らなければ、画家だと思ってしまうことでしょう。

B6_coctrそこから歩いて約5分くらいで新しいコクトー美術館へ着きます。海岸べりにある平屋の建物で、落成年次が最近なせいか、設計が今風な作りです。そして、とにかく明るい。内外を仕切るガラスが建物の境界を曖昧にしてしまうような、そんな作りになっています。


B4_coctr念の入ったことに、ゲートを入ってすぐの床面にはサント・ソスピール別荘の玄関と同じものが映写されていたり、地階への階段上には別荘の地階階段にある絵画の写真が添えられていたりと演出ふんだん。

地階にはマチスやピカソの絵画もいろいろありました。また、コクトーの映画「オルフェの遺言」が流れていたり、ピカソのデッサン作業が映像で紹介されていたり、絵以外のものも楽しめるようになっています。

展示されているコクトー、ピカソ、マチス等々の作品を観ていると、この1週間の総まとめをしているような感覚になってきました。


B8_coctr迷いのないカタチ、明るい色調、大らかなバランス等々、戦後の開放(解放?)感と相まってか、画家たちが実に伸び伸びと自由に創作している様がそのまま伝わってくるようです。そんな作品を間近に観ることができて、ニースに来てホンマに良かったと改めて思う次第です。

次の日はイタリアへ抜け、ピエモンテのアルバで2度目のPiazza Duomoのディナーを堪能。その翌日にトリノからフランクフルト経由で帰国。予想以上に楽しく、収穫の多い旅行となりました。


Menton以降の行程は以下の通り。この後、おいしいニースや2度目のPiazza Duomo(どちらも仮題)などを予定しています(続く)。
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