骨董掘り出し人生

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骨董掘り出し人生 (朝日新書 80)中島誠之介 (朝日新書 2007.11.30)

なかなか面白い本でした。読み終わってみると、あのTVの映りもなるほどなぁと納得できるもの。著者は「何でも鑑定団」で有名な中島誠之介さん。この手の人の本はふだん読む気もしないのですが、何故手を出したかといえば、どこかで紹介されていた、本の中で紹介されている著者の生い立ち等に興味を覚えたから、です。



一歳の頃に両親と死別。遠縁に引き取られ敗戦を迎えますが、その養家も廃れて養母と別れ、骨董商の伯父の下へ。どこかのボンボンみたいな雰囲気は生来のものかもしれませんが、苦労は並大抵のものではなかったというわけです。しかし、著者は負けませんでした。

いろいろ苦労しながら勉強したり、お金をためて北海道に出かけたり、あげくマグロ漁船に乗り込み海外に出かける下りは、ご本人も書いているように『どくとるまんぼう』さんや『なんでも見てやろう』さんのようでもあり、まるで冒険小説のようにも感じます。

結局は伯父の跡を継いでお店をやることになるのですが、この間の話もなかなか面白い。修行の過程やその内容は本を読んでもらうとして、そうやって成功させたお店を閉じ、なぜTVや講演に集中するようになったか。その理由と経緯をご本人自ら語っています。

読みながら、妙に共感納得。時代の変化を感じ、TVマンらの感性に賭けたという意気込みはわかりますし、TVの作り方が著者ら骨董商のやり方とは全く違うものであることへの指摘はその通りでしょう。

人生は3期あるという説明や鑑定書があると眉唾もの、・・・等々本文中に出てくる名文句の数々には興味を引かれます。

最後に。この本は初っ鼻の『はじめに』から引き込まれてしまいます。TVで名を挙げただけあって、ヒキがうまいというべきところ。最初に本当のタカラとは何かと問いかけるとともに簡単な答を出しておいて、本文の自伝でそれを展開させるという、よくできた構成の本になっています。骨董に興味がなくても楽しめる内容ですが、古伊万里や陶磁器をかじった人なら尚楽しめる内容です。読後感も爽やか。とってもいい拾いモノ、いや掘り出しモノかも。