できるだけ遠くに それも余裕のある間に その1

.opinion 3.11

スポット的な放射線被曝の数値を取り上げ、安全だ・神経質になる必要はないとする専門家やそれを支えるメディア。・・・・・デタラメな情報に惑わされるなと国などは云いますが、ゴマカシやマヤカシをやっているのは彼らの方じゃないですか(きっぱり)。

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原子力資料情報室から昨日18日付けで「福島原発の危機について私たちは考えます —原子力資料情報室からのメッセージ(2)」がでていることはお伝えした通りです。その中にも、「(妊婦(胎児)・幼児・子供たちは)福島原発からできるだけ遠くへ避難した方が安全」との記載がありました。

私が「できるだけ遠くに それも余裕のある間に」退避するのが肝心だというのは、もう少し違う観点からの言い分ですが、そのことを説明する前に、TV等で繰り返されている被曝線量の「安全性」について、それらが如何にマヤカシであるかを説明しておきましょう。

1)1時間値で被曝の影響を語るマヤカシ

今回メディアが放射線量として出している数値は、各地各団体が測定している1時間当たりの被曝線量。でも、その場所で暮らす人にとっては1時間値 x 24時間(1日)x 365日(1年)が1年間の被曝量となります。つまり、年間被曝量は1時間値の8760倍になります。

たとえば、福島市の1時間値は11.2マイクロシーベルトですが(3/18朝日新聞)、これは年間でみれば約98000マイクロシーベルト=98ミリシーベルトになります。この値は、放射線業務従事者の5年間での許容量である100ミリシーベルトと同程度になります。つまり、職業として放射線業務に従事し、定期的な健康診断を義務付けられている放射線業務従事者の5年間の許容量と、福島市の1年間の被曝量が同じレベルというわけです(福島市の1時間値がこれ以上増えも減りもせずに持続すると仮定した場合)。

自然環境から被曝する量が年間約2.4ミリシーベルトなので、原発事故で年間98ミリシーベルトになると40倍以上になるというわけです。これでは一般人にとって安全だといえる科学的根拠はないはずです。もう既に1時間値が10マイクロシーベルト前後のところはたくさん出ていることから考えると、国民がパニックにならないように、1時間値だけを広報しメディアを使って洗脳していると考えざるを得ません。

一方、緊急作業の場合、放射線業務従事者は1回で100ミリシーベルトの被曝を許容されています。ちなみに、1回で250ミリシーベルトの被曝をすると白血球が減少し、1000ミリシーベルトで急性放射線障害、2000ミリシーベルトで5%死亡、3000〜5000ミリシーベルトで50%死亡、7000〜10000ミリシーベルト以上なら99%死亡、というのが放射線障害の実態です。(注意)これは急性障害の話。晩発性の被害はもっと低い放射線量でも起こります。

1回で100ミリシーベルトの被曝を受ける放射線業務従事者も大変ですが、今回、政府は、放射線業務従事者の1回被曝量の上限を250ミリシーベルトに引き上げました(今回の原発事故で、東電は原発労働者に1回で250ミリシーベルトまで被曝させても許容されるということ)。被曝を受ける労働者の方にとって大変な事態ですが、そうしなければ原発事故の収拾が不可能な程、事態が逼迫していると見るべきところです。

2)診療時の被曝と同列に扱っているゴマカシ

また、メディアではCTスキャンや胸のレントゲン検査の放射線被曝を持ち出し、現在の被曝線量(1時間当たりの被曝線量)はそれよりも低い・同じくらいだ(だから安全だ)等という議論を展開しています。

単純な数値の議論にごまかされてはいけません。医療行為では被曝と診断とを秤にかけ、診断の方にメリットがあるからという判断をしているのであって、デメリットしかない原発事故の放射線被曝とは意味も位置づけも全く違います。第一、胸のレントゲンにせよ、CTスキャンにせよ、診断のために必要な時に1回とか数回とか撮るのであって、1年365日毎日連続で1日24回づつ撮る、なんてことはありません。

原発の電気を日頃使っているのだから(メリット)、事故時の被曝(デメリット)を堪え忍ぶべきだという説明を電力会社や国がするのであれば、どれほどの国民が原発に賛成するでしょうか? ましてや、今回の福島原発のようにメリットは大都市に集中し、被曝のデメリットは福島の地元がかぶるのですから公平性も何もありません。医療診断時の被曝との比較で今回の原発事故の危険な被曝状況をごまかす人たちの話を信じてはいけません。

(続く)