いい写真

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写真を撮る人なら誰しもいい写真を撮りたいと思うのが普通です。でも、「いい写真」とは何かと問われると、これがなかなか難しい。必らずしも決定的瞬間を撮し込んだものではないし、ピントくっきりで隅々まで解像感の高い写真とも限りません。ヒトの好みはそれぞれですが、これゾという答があるわけではありません。

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「いい写真」はどうすれば撮れるのか? ~プロが機材やテクニック以前に考えること

写真家の中西祐介さんの、「いい写真」はどうすれば撮れるのか? を数ヶ月前に読みました。サブタイトルは「プロが機材やテクニック以前に考えること」。表紙には以下の通りの文言があります。

いいカメラを使えば「いい画質」にはなるけど、「いい写真」になるとは限らない。どんなに高性能なカメラでも、「何に向き合い、何を感じて、どのタイミングで撮るのか」は教えてくれない。

その通り。このフレーズで本の内容は尽きています。

かく云う私も「いいカメラ・いいレンズを使えば、いい写真が撮れるのではないか」と思うことが過去に何度もありましたし、今でもときどきあります(苦笑)。

でも冷静に考えれば、機材のレベルに腕が追いつかないと使い物になりませんし、いくら機材が良くても目的に合致しないならあまり意味はありません。また撮影者(自分)にとって撮したいものが明確でないと、どうやってどう撮すかも曖昧になってしまいます。


中西さんの本とは離れますが、他の「いい」を考えてみましょうか。

たとえば、「いいワイン」とは何か。安いワインなのか、美味しいワインなのか、それとも安くて美味しいワインなのか。たしかにそうかもしれません。でも超絶に美味しいワインがあることを一度経験してしまうと「美味しい」という意味づけは変わってきます。また、ワインに限らず飲食物はシチュエーション次第。いくら高価で美味しいワインでも料理に合わないとアウトだし、誰と飲むかで味わいも変わります。つまり、席をいっしょにするメンバーとの語らいとその時の料理に合ったワインがあればベターではないでしょうか。

また、「いい絵画」とは何か、あるいは「いい人生」とは何か等とどんどん対象を広げていくと、「いい」という云い方の曖昧性がよくわかります。だって考える人それぞれが置かれた状況次第で、答らしきものが大きく変わってくるから。

これが「いい写真」かどうかは横に置いて、私が見た紅葉の雰囲気をうまく表現できました(2017/11/17 @南禅寺)

写真の話に戻ると、要するに写真を撮るということの基本は、何を撮そうとしたか、その意図や目的はうまく表現できたのかどうか。結果、観る人の心に何かしら響くものがあったらこの上なし。そう考えてくると、カメラやレンズ機材は手段だし、それを活かす技能も必要条件であって十分条件ではありません。中西祐介さんの本を読みながら、いろいろ考えるところがあり、有意義な読書タイムとなりました(感謝)。