障子の効用
2007/11/19
カーテンを使わず障子でいこう。家を建てる時に考えたことはいろいろありましたが、その一つがこれ。正解でした。少なくとも私にとっては。理屈を考えてもかなり理のかなった建具だと思います。その障子の効果について少し考えてみませう。
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障子といえば、和室と外、あるいは外に通じる廊下を隔てる衝立のようなものという印象があるかもしれません。障子は紙が光を透過させることを期待していますので、外界との仕切りのようなものとして使うと明るさを室内に引き込めますし、その光の効果は非常に柔らかい。
一方、襖は部屋と部屋とを隔てる間仕切りであり、光は通しません。
カーテンはどうでしょうか。こちらは上だけを固定するため、外との境界用としては曖昧で間仕切りとはいえません。ただ、光を通すもの、遮光するもの、いろいろあり、外の光に対する対応は様々です。
ちょっと考えてみても、同じ間仕切りでも障子と襖、そしてカーテンとでは内容どころか、役目も違います。でも、教科書的に考えてしまうとそこで話はオシマイ。じゃ、もう一歩考えを進めてみましょうか。
私自身、障子の効果を理解したのは、黒姫高原のペンション「ふふはり亭」の客室に備えてあった障子を見た時でした。それまで日本家屋にある、時折紙の張り替えを要する面倒な建具・・・、そんなイメージしかなかったのですが、あにはからんや、これがなかなかのものではないかと思ったのです。
まず、障子は上下を固定しているため空気の通りが少なく、温度バリアとして使えること。カーテンでは下から熱が逃げる、あるいは入り込むので上手くいきません。信州の、雪の積もる寒い朝でも障子を閉めてしまえば窓からの冷気がかなり削減されるのです。家の設計をあれこれ考えていた時に「ふふはり亭」に泊まりにいって再度確認したところ、結露もそれなりに抑えられることを知りました。これは素晴らしい。
次に掃除の手間。カーテンは開け閉めで埃を部屋中に散らかしているようなモノですが、障子はこの悪影響が少なくなります。埃の問題は意外とそうじ無精にとっては面倒なもので、そういう意味でも障子は有効です。もちろん数ヶ月も掃除しないと桟に埃が溜まるのでいっしょのようなものですが、それは別次元の問題です。
では障子の面倒な点、問題点などはどうでしょうか。カーテンの場合、レースのような素材を使うと風通しができますが、障子の場合は無理です。これは先の熱遮断の利点の裏側にある問題点ともいえますのでまぁトレードオフみたいなものとして評価すれば良いでしょう。
障子紙の張り替えはどうでしょうか。実はこれが設計時に悩んだ点でした。使っている人の話や建具屋さんの話を聞くと、紙が日焼けして色あせてしまう、あるいは破ってしまう等という理由で年に1度や2度張り替えるという人が多く、そんなに手間がかかるなら厄介だなと思っていたのです。でも、これは「あること」で乗り越えることができました。それが、引き込み障子の採用です。
引き込み障子とは、引き戸を窓面に残すのではなく壁の中などに引き込んでしまうタイプですが、拙宅では壁に沿って引き込んでしまう方式を採用しました。こうすると障子を使わない時には紙が窓面からの光に当たることはありませんので紫外線による劣化が妨げられます。これは正解でした。現在築後9年目に入ろうかとしていますが、紙の色はほとんど変色しておりません。建具屋さん泣かせの仕様ともいえましょう。
そういうわけで、拙宅はすべて障子で、カーテンはひとつもありません。西洋のカーテン、和の障子。どちらも一長一短ありますが、熱効果や掃除・メンテの手間を勘案した結果、私たち夫婦が選んだのは障子でしたが、これは拙宅の建築仕様の中で成功したものの1つとなっています。こちらの細かい要望をあれこれ聞いて下さり、作って下さった勝部建具店さんにも感謝しています。