さや管ヘッダー工法07
2007/05/17
このサイトに訪れる方々がお使いになるキーワードの中で、依然として人気の高い「さや管ヘッダー工法」。拙宅では98年に設計、99年施工。その経緯と内容については自宅工事記録に書いた通りですが、当初の目論見と方向が妥当だったのかどうか。現時点での私の考えは…。
さや管とかさや管ヘッダー工法とは何か。一般に宅地内配管では管を繋ぎながら目的の水栓まで伸ばしていきます。接続する部分には継ぎ手と称するモノを使い、そのまま繋いだり、分岐を作って繋いでいきます。工事は比較的簡単ですが、管や継ぎ手の耐用年数がきてしまうと、床をはがしたり壁を壊して管や継ぎ手の交換工事を行うことになります。水道管を躯体に埋め込んだマンションなどでは悲惨です。
一方、さや管工法というのはさやの役目をする一回り大きな管材の内部に水道管を入れて配管するもの。その中で、配管経路途中で分岐を作らず、ヘッダーと称する部材と水栓を直結する工法をさや管ヘッダー工法と云います。
この場合水栓部分に特殊な部材を用いれば、後々躯体をいじらずに内部の水道管だけを交換することができます。拙宅工事の際に一度設置した水道管を取り外せるかどうか調べたところ、ちゃんと簡単に抜管交換できましたので、その話はまぁ間違いないでしょう。
さや管工法の利点はいろいろあります。1)管素材はポリエチレンやポリブテンなどで、塩ビ系水道管を使わずに済む。すなわち、鉛等有害物質の危険性がなく、塩ビ鋼管の劣化で発生する宅地内での赤水問題は起こりえない。拙宅で塩ビ水道管を使いたくなかった最大の理由は鉛の問題(*注1)。2)継ぎ手を使わないので配管途中での漏水の可能性は皆無に近い。3)管の躯体埋め込みはできるだけ避けたいものですが、行ったとしても躯体を破壊せずに内部の管だけ交換することが可能。4)結露などの心配が少ないか、ほとんどない等々。
厄介な点もあります。まず、本工法について水道工事業者の経験がほとんどないせいか、実施施工に問題が出てくるケースがあること。始めての業者の場合、そんな工法は意味がないとか、過剰設備だとか云い出して自らの不勉強と無知を正当化する困った向きが実際あるようです。工法の内容は既に製造メーカーによる施工マニュアルがありますし、現場で何度か試行錯誤すればすぐに学べます。要はやるかやらないか。だから、これは欠点とは必ずしも言い難い。大事な家づくりですから、工事業者の選択にも要注意です。
費用はどうでしょうか。本工法は伝統的な継ぎ手工法に比べ費用がかかりますが、シンプルな設計で済むなら通常の工法とさほど大きく変わりません。ただし、ヘッダー個数や水栓金具の数で大きく変化しますので、それぞれの家の水道管延長や引き回しの内容に費用が変わってくるとお考え下さい。
さて、本工法による現時点での私の評価は以下の通り。
・塩ビ管・塩ビ鋼管を水道管に使わない方法を採用したいというのであれば、さや管ヘッダー工法で塩ビ以外の樹脂管を使うか、あるいは樹脂管の分岐継ぎ手工法を使うのがベター。(*注2)
・結露や漏水防止に関する利点は大きい。拙宅例でいえば、今のところでは(10年弱)全く問題ありません。床下や壁内部の湿り気原因は排除できています。
・拙宅工事の8年前に比べて随分さや管ヘッダー工法も普及してきました。コスト的にどうなっているのか最近の工事例は知りませんが、当局対応も業者対応も、8年前より好転してきたような気がしますので(統計的に確認したわけではありません、念のため)、工事をし易くなってきたのではないでしょうか。
・約20年程度で発生する交換工事の費用負担を気にしないのであれば、特殊な水栓金具を設置せずに初期工事費用を抑えることが可能。お金の問題ですから人それぞれのご判断でお考え下さい。
最後に一言。
私が声を大きくして云いたいのは塩ビ系水道管の危険性。塩ビ系水道管を排除すれば、多くの問題は解決します。だから、さや管工法でなければ水道管として「あぶない」とか「危険だ」というのではありません。誤解なきようお願いします。ただ、さや管工法は結露や漏水、劣化対策にも優れているので、「推薦」工法である点には同意しますし、拙宅でも採用理由の一つとなりました。
一方、家屋内の水道管にステンレス管や銅管を使うのは(私は)薦めません。金属管は温度によって結露を引き起こすので、床下や壁に設置すると厄介なことになります。経年劣化による漏水も心配。家を湿らせたりカビさせてしまうと大変ですので、ご注意下さい。
(*注1)大手メーカーの水道用塩ビ管には現在鉛が含まれていないとの文献もありますが、メーカーが責任をもって情報公開しない限り実態は闇の中。当局も過去の責任問題を頬被りしたいのか、この鉛問題に真摯に取り組んでいません。
(*注2)さや管工法ではなく、ポリエチレンなどの樹脂管を使って分岐継ぎ手工法を行うこともできます。その場合には塩ビ鋼管や塩ビ管と違って工場で前もって水道管を作成し、それを現場で設置するほうをお薦めします。そうでないと、品質保証のない現場継ぎ手では漏水原因となる危険性があるから。
(暫定稿 2007/05/13)