ヒトはなぜ太るのか? その4 フルクトース

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ヒトはなぜ太るのか?炭水化物(糖質+食物繊維)はどこでどういう風に分解されて、利用されるのか。一般的な答は、消化器系でグルコース(ぶどう糖)に分解され血糖となって体の隅々まで運ばれ、エネルギーとして活用される、というものでしょうか。私の理解もそうでしたが、この理解は不十分でした。
トーベス本前回紹介したルスティグ先生曰く、炭水化物のうち、果糖(フルクトース)はそういう経路を辿らず、そのことが肥満の原因になっているにもかかわらず理解されてない、その結果きわめて厄介で危険なことになっている、とのこと。フルーツダイエットなんかとんでもないというわけです。

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果糖というのは英語のfructosからわかるように果物等にたくさん含まれる糖で、天然にある糖のうち最も甘いとされています。また、私たちがよく知っている砂糖〔しょ糖、スクロース)というのは、果糖とブドウ糖が化学結合したものです。

砂糖は消化器系に入ると果糖とブドウ糖に加水分解されます。この時、ブドウ糖は消化器系から吸収され血液中の血糖になり、体の隅々まで運ばれてエネルギーとして活用されます。じゃ、果糖も同じような経路を辿るのかといえば、そうではありません。

果糖は肝臓において酵素で分解され、中性脂肪(トリグリセリド)となります。その後、脂肪と同じ代謝経路を辿って脂肪細胞に貯えられたり、あるいは中性脂肪から脂肪酸になり、エネルギーとなるブドウ糖を作り出します(糖新生)。面白いですね〜。糖なのに脂肪のようでもあり、一部は最終的にブドウ糖になるものの直接的には血糖値を上昇させないのです。

cherry13フルーツを食べてもあまり血糖値を上げないのはこの特性ゆえですし、一部の栄養学者や医学者がフルーツやフルーツジュースをダイエットメニューに勧める根拠もこれなのでしょう。

でも、果糖は本当に安全なのか。それは危険な考え方であるとトーベスさんは警鐘を鳴らし、砂糖は毒だと言い切った前回のルスティグ先生の講義の大半は、まさにこの果糖の毒性に焦点をあてていました。

果糖はブドウ糖のように血糖値を直接上げることはありませんから、インスリンの出動には繋がりません。でもその反面、肝臓において多くが脂肪に変換され、血中の脂肪酸としてエネルギーの元になったり、体内の脂肪細胞へ蓄積されることになります(肝臓に溜まれば脂肪肝)。

stone1305インスリンがちゃんと分泌され、体内のインスリン抵抗性が少ない状態なら問題ないのですが、摂食した炭水化物による血糖値上昇をインスリンが抑えている時、果糖由来の脂肪酸は体内の脂肪細胞に貯えられてしまいますから、肥満防止どころか全く逆の効果を生み出してしまいます。

また、時間の経過とともに体内のインスリン抵抗性が高くなってくると(これは糖尿病や糖尿病もどきの人の常態)、インスリンはさらにたくさん必要となります。そうなると、血中の脂肪酸はエネルギーとして使われることなく脂肪細胞へと向かい、肥満がどんどん進行していきます。

脂肪の摂食とは関係なく糖質の果糖で余計な脂肪の蓄積、つまり肥満が起こるメカニズムがこれで、インスリンが肥満ホルモンといわれる所以の1つです。これを断ち切るには果糖を含む糖質を制限するしか方法はありません。

最後に一言。
フルーツやフルーツジュースは果糖の代謝を考えるまでもなく糖質いっぱい。おまけに上に述べたように、果糖を積極的に摂取するフルーツダイエットは「肥満を防ぐ」どころか、「肥満になる科学的根拠こそある」のです。糖質オフなどと云ってフルーツジュースを勧める医者がいますが、とんでもはっぷん。

少量の果物は季節感を愉しむ程度ならいいかもしれませんが、ダイエットを目指す人のみならず、糖尿がらみの人は近寄ってはなりませんね〜。日本で糖質制限を薦める医者らの解説本では、肝臓での果糖の代謝から肥満に繋がる話はあっても、それが危険だという説明は出てこないので、尚更トーベスさんの視点は大事なポイントだと思う次第。

なお、上記説明はトーベス本の受け売りで私の理解が足りないかもしれず、詳しく知りたい人はトーベス本を是非どうぞ。

ayame13