埼玉プール事故:クチの名前

プール事故

ふじみ野市大井プールで起きた事件で、女の子を吸い込んだ吸水口。当初この部分の名前を排水口としたメディアもあり、その説明に対し問い合わせやクレームが上がっていたようですが、それは少し筋違いです。私自身、ずっと排水口という用語を使ってきたので、TVやラジオでは吸水口と言い替えるのに一苦労しましたし。どうしてかといえば、プール水を循環させている引き込み口は従来、排水口と呼ばれており、国その他の記載でも排水口・排水設備と称されています。いわば設備用語なのですから。…

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プール水の循環処理のためにプール側から水を取り出すクチの名称をどう名付けてきたのか。

プール側からみれば水が抜かれ排水されるのですから、排水口。
ポンプ側からみれば水を吸い出すので、吸水口、あるいは取水口。
プールの水をぐるぐる循環させているとい観点でいえば、環水口。

これらはどれも使われている同じクチの名前です。
排水と聞けば、水を捨てるので循環とは違うのではないかという指摘は、その通り。でも、プール水はこのラインから排水するのが一般的なので、このクチの目的のひとつとして排水というのがあり、今までその名称が使われてきたのも意味があるのです。

今回のふじみ野市では問題部分のクチを吸水口と称していました。だから、報道でも吸水口という名前を使わなければならなくなった、というだけ。もし現場での呼称が排水口なら排水口になり、環水口なら環水口になっていたはずです。

ただ、流水プールとそうでないプールではポンプの吸引力が異なることを考慮すると、流水プールでは吸水口とし、一般の循環浄化型プールでは従来通り排水口とするのが適当ではないかと思うようになりました(私見です)。ただし、どちらも人の命を簡単に奪ってしまうクチであり、「悪魔の穴」であることには変わりありません。

もうひとつ。吸水口はプールから水を取り出すクチですが、では吸い込んだ水をプールに戻す方のクチはいったい何と呼べばいいのでしょうか?
今回のプールでは出水口と称しているらしいのですが、吸水の対でいえば吐水口、あるいは水を供給するという観点では給水口というのもあります。用語というのは難しいですね。

用語がそのモノの姿を体現するという立場の方々には納得しがたい点もあるかもしれません。でも、用語よりもそのクチの持つ本質的意味合い(目的、内容など)に注目していただきたい。用語いじりよりも今回の事件の原因追及や犯人捜しの方に重きを置かないと、被害者の名誉回復には繋がりませんから。