岸朝子　著　PHPエル新書　2003/10/24
久しぶりに先月沖縄を訪れ、泡盛と料理に改めて驚かされました。関連話題は一泉庵でいくつか紹介していますが、ここでは岸朝子さんの著書をひとつ紹介しましょう。
「料理の鉄人」で岸さんのお顔と「おいしゅうございます」をご存じの方は多いはず。私もそうです。この本はその岸さんの沖縄料理の紹介なのですが、題名が示すようにチカラを与えてくれるような、そしてスローフードの精神に満ちた内容になっているところが二重マル。…

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なにゆえ、沖縄料理なのか。まず著者は、沖縄の女性たちの長寿さを示すとともに、35歳から44歳の沖縄男性が全国ワースト１であることを取り上げ、沖縄がもはや長寿県ではないことをデータで示します。その理由として沖縄での食生活が米国による占領政策で戦後著しく欧米化したことを上げ、一方で女性の長寿状況については、「都市部以外では伝統的な食習慣が家庭で守られてきた」からとしています。少し根拠に弱い気がしますが、まぁデータはデータ。沖縄女性の長寿傾向には何らかの理由があるとする見方は何らかの仮説を持ち出していいはずです。

そして、その長寿の源である沖縄料理について、著者は大宜見村の例を自分自身の体験を交えながら語っていきます。ここがとってもいい。著者の人柄が滲み出てくるような記述に思わず、自分もその親戚になったような感じになってくるから不思議です。

沖縄の食材についても非常にわかりやすい説明となっており、私は他に沖縄ぬちぐすい事典―沖縄から伝える健康と長寿というのも持っているのですが、岸さんの本だけで十分ではないかと後から思ったくらいです。

代表的な沖縄料理を写真つきで紹介するページもまたいい。ただ、出てくるレシピがスタンダードなのかどうか。沖縄県関連のHPや他の料理本などで確認しながら、自分に合ったレシピを選び取っていく方が良いかもしれません。

実は、岸さんが沖縄出身であることはつい最近旅行ガイドブックで知ったばかりでした(左）。そこでは岸さんが娘さんといっしょに沖縄料理を語っている箇所があります。私自身、沖縄料理に興味をもったこともあり、一度岸さんの書かれたモノを読んでみたいと思い、「沖縄料理のチカラ」を手にしましたが正解でした。スローフードにご興味がある方は是非読まれることをお薦めします。