屋根の上(沖縄にて)

Water

屋根の上には何がある? 大きな青い空があると答える人は大らかですね。その感性を大切にしましょう。でも、ここで話題にするのはaboveではなく、onの話。先月の沖縄旅行で見つけたモノを紹介します。…


沖縄に行くと屋根の上にタンクが載っている家を多く見かけます。本土でもマンションの屋上に高架水槽がありますが、それは通常の水道水の給水圧では上階住居まで水が届かないのを補う目的で設置されるもの。でも、沖縄のタンクはそれとは少し意味合いが違っています。

まず、沖縄のタンクはそれぞれの住居におけるミニダムのようなもの。沖縄には大きなダムがありません。したがって、雨が降らない日が続くと水道水の供給が押さえられてしまいます。渇水は毎年のごとくありますので、雨水頼りでは水の利用に支障が出てきます。そこで、各家庭にタンクを置いて貯水機能を設けているというわけです。


次に、屋根上のタンクは昔の井戸の機能を補うものだという解釈も聞きました。昔は井戸を掘って対処してきた地域でも、便利な水道が普及するとメンテの必要な井戸水を見捨てる傾向がでてきました。その結果、渇水時に井戸に頼ろうとしても無理が生じます。そこで、井戸に替わるものを屋根の上に設けた。つまり、沖縄の屋上タンクは水圧不足を補うタンクではなく、非常時の水量確保のタンクだというわけです。地上に置かないのは、伝統的に動力エネルギーなしで給水することを狙っているからでしょう。

過去の沖縄旅行でもちらほら見かけましたが、今回ステンレス製タンクが随分増えているのに気づきました。コンクリート製やプラスチック製よりも使い易いせいなのか、それとも色彩的な好みが変化してきたのか。コストはプラスチック製よりも高価だと思いますが、大里村や南風原町を通っていると随分ステンレス製タンクを見かけました。時代は変わってきたのかも。

もうひとつおまけで、屋上緑化。それも自然緑化の一例です。写真は、陶器の壺屋通り筋のワンショット。屋根瓦の下に土を使うせいなのか、瓦の間から緑が出てきて花を咲かせていました。

もちろん、これは緑化という営為ではなく、偶然の産物ですから、住居温度の低下を目的としたものとは全く違います。でも、屋根の下に使う素材が化学合成物質だったら無理だから、新興住宅地ではまず見かけることができないでしょう。そういえば、屋根の上に雑草を生やして、もっとらしく何とかハウスと称したものを聞いたことがありますが、昔の家では当たり前だったのではないかと思わせる光景です。