捨てるニコンに拾うリコー あるいは、生き返るマニュアルレンズ 

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私は昔、ニコン党でした。バイトで貯めたお金で買った最初のカメラはNikonFM、レンズは50mmF1.4。1979年頃の話。その頃から使っていたレンズが数本ありますが、現在のニコンデジカメではマニュアルレンズを使うと露出計が働かず、使い勝手が悪すぎ。ところが、最近のミラーレス一眼の勃興で状況が変わってきました。

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ニコンのレンズは50年以上マウントが同じ、という誇るべき歴史を持っています〔マウントというのはカメラとレンズの境界部分)。つまり、昔のニコンについていたレンズでも最新のデジカメに取り付けられるというわけ。でも、付けられるというだけで有効に使えるかどうかというとペケ、及第点が出せません。

前列左から55mm,35mm,24mm,後列左から105mm,35〜135mmZoom

つけてみればわかりますが、露出計は連動しませんし、絞りやシャッター速度をカメラ側でコントロールすることもできません。全くの見当合わせに露出を合わせるか、別に計器を用意しなければなりません。これでは現代のユーザーには苦痛というより無理でしょう。

ところが、私が使っているリコーのGXRではマウントアダプタを経由すると、ニコンのマニュアルレンズでもオッケイ。カメラの露出計は働くし、撮像面での映り方も液晶画面でばっちりわかります。撮像面での光や像を元にカメラが情報を出してくるからで、昔のレンズがより快適に蘇ります(ミラーレスカメラにはソニーのNEXシリーズやパナ、オリンパスのフォーサーズ版もあり。ちなみに、ライカならGXRにはMマウントそのものが用意されているのでアダプタも要りません。)。

GXR+アダプタ+NIKKOR 24mm

それにしても、ニコンレンズが本家ニコンカメラよりもずっと便利になるなんて…。考えてみると驚きで、謂わばニコンが捨てたレンズをリコー等が拾ったようなものですね。

レンズというのはなかなか長寿命。昨今の電気仕掛けのはともかく、昔のは精密工具そのもののような造りですから長持ちして当然なのかもしれません。ライカやツァイスのレンズなら50年以上前のでも問題なく使えますし、ニコンのだって同じ。昔の製品は立派だったというべきか、電化製品が10年そこそこしか寿命がない時代に長寿命製品って少ないですな〜。

実際私の持っている30〜35年前のニコンレンズは丁寧に使ってきたので、ほとんど新品?同様。レンズに投資した金額はカメラフリークなら半端じゃないだろうし、愛用レンズがまた蘇るってのは何かそれだけも嬉しくなってきます。年寄りを大切にしろという啓示かもしれません(笑)。

ミラーレスカメラやGXRの副産物はニコンレンズだけの話じゃない。つい先日中古ライカ店の店主から聞いたところ、ライカレンズの価格がここ最近10%以上値上がりしているとか。私を含め、ライカレンズに憧れている人は多いでしょうし、使えるとなれば新品はともかく中古ならと手を出す人が増えて当然。ともあれ、ミラーレスカメラやGXRなどはコレクターの倉庫からオールドレンズを陽の当たる場所へ引っ張り出してきたようです。

もうひとつ。
こうやって同じカメラにニコンのレンズとそれ以外のレンズが等しく付けられるようになると、レンズの違いが明らかになってきます。ニコン党だった私でもフォクトレンダーやライカのレンズに目移りしてしまうのは、何もブランド効果だけではなさそう。

ニコンレンズにはニコンの、ライカレンズにはライカの、それぞれの良さがあり、好みの問題を言い出せばキリがないのでしょうが、ライカレンズのシャープさと鈍さの混在は、写真を撮ることを単なる事実関係の記録から、文章や絵画を描くような作業感に変えるかのような、何とも表現しにくい微妙な感じ。私がここ最近嵌まっているのもそこらですが、レンズの違いによるピントの切れ、階調表現の差、使い勝手のあれこれ、個人的にはもう少し使い込んでから改めて考えてみたいと思っています。

おまけ)下に示すのは、GXRにNIKKOR24mmで撮影した開花前の盆梅です(クリックで大きなサイズが見られます)。ニコンのオールドレンズを持っている人は、デジカメ機能とマニュアルレンズのマリアージュを是非チェックしてみて下さい。なかなかですわ。

続編として、
Micro-NIKKOR 55mm

(後記)ニコンレンズを拾ったRICOHでしたが、PENTAXの吸収後カメラ事業を整理してしまい、結局GXRのような面白いカメラを捨て去ってしまいました。つまり、拾って捨てたというわけです。企業保全・利益優先とはいえ、ユーザーを裏切ったのは残念。私もRICOHへの愛着が一気に失せました(2014年にそう思ったので、フルサイズはLEICAに…)