黒い雨の行方 その2

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黒い雨 [DVD]先日『黒い雨の行方』を書きましたが、また新たな情報。前回のは長崎の「黒い雨」でしたが、今回は広島の「黒い雨」。

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北國新聞8月6日によると、「広島で原爆投下直後に降った「黒い雨」に由来するとみられる放射性物質を、金沢大の山本政儀教授(環境放射能学)らのグループが、爆心地から約20キロ離れた民家床下の土壌で検出した」とのことです。(1945年の敗戦以降、1949年以前に建築された民家の床下を調査しました)

山本先生といえば、東電福一原発近辺でプルトニウムを検出したことでも知られています。今度は広島で降った「黒い雨」から放射性セシウムを検出したとのこと。半減期を考慮すると、当時は数百ベクレル/平方メートルが降下したことになるそうな。この値は福島県内の多くの地域より低い線量です。広島の「黒い雨」で生涯にわたる健康障害を負ったということが実証されてくると、福島をどう考えるべきか。低線量なら問題なし、とは云えない実例となるはずです。

当局筋は「黒い雨」では被曝が明らかではないといいます。でもそれは「黒い雨」をなかったことにしてきたから。米国とそれに連なる日本の研究者たちが隠蔽した放射線被害でした。何度も繰り返してきたように、ヒロシマ・ナガサキでは「原爆の爆心から3.5km以上離れた地域は被曝地域ではない」とされ、賠償絡みでも爆心2km以内という大きな(愚かな)壁があります。その壁を作った研究者たちが今まさに福島でアドバイザーを務め、100ミリシーベルト以下なら問題なしと公言しているのは偶然ではないでしょう。

66年の時を経て、福一原発事故が起きたが故に?、また光が当てられてきた「黒い雨」被曝問題。結果が出てから判断するのでは遅すぎます。ほとんどの人が鬼籍に入ってから、あなたの障害は被曝が原因でしたと云われても何の意味もありません。失礼しましたで済まされることでしょうか。私はそうは思いません。

今すぐ(というより4ヶ月前に、というべきなのですが)「予防原則」を発動しないと福島の人たちの生活や命はだいなしになってしまうでしょう。すべての証拠が揃わないと何も云えない・科学ではないという人たちの意図がどこにあるのか知りませんが、「結果が出てから」では遅すぎます。限られた条件の中でどう判断するのかも科学の一手法。被曝させる側の論理に基づいた「結果」至上主義の科学と、被曝させられる側の自主的抵抗としての予防原則という科学とのせめぎ合い、それが今起きているのだと私は考えます。ここらの判断が未来への分かれ目になるのではないでしょうか。