大本営発表

.opinion 3.11

昔この国では戦争に負け続けていても国民には勝利勝利と伝えていたそうな。私など経験がないので本などで知るしかなかったのですが、地震直後からのNHK等のメディア報道を見るにつけ、あぁこういうのが大本営発表なんだなぁと思うことしきり。(一部の数字に記載ミスがあり、3/20の21:50に訂正しました)

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メディア報道や解説に出てくる「学者」や「専門家」は、国の意向を汲んで話をする者が殆ど。はっきり云えば、国や原子力業界の提灯持ちばっかり。もともと、1時間あたりの放射線被曝量と胸部レントゲン撮影を比較すること自体がナンセンスですが、この方々は1時間当たりの放射線被曝量が胸部レントゲン撮影と同程度とか少ないとか云って、視聴者をごまかしていました。ある場所の放射線被曝量が1時間当たりの値だとすると、1日では24倍、1年では8760倍になるのに、そんなことはオクビにも出しません。数字だけ細かく発表しても、その数字の意味するところを正確に伝えない限り、視聴者を騙していることになると思います。

さらに、数日前には胸部レントゲンを引き合いに出していた「専門家」が、今朝はCTスキャンを引き合いに出していました。前者は50マイクロシーベルト、後者は7000マイクロシーベルトなのですが、どれだけの視聴者がこの100倍以上の違いを知っているでしょうか? さらっとCTスキャンに移行して100倍以上の差を乗り越える技は、彼らの真骨頂と云うべきものでしょう。こんな提灯持ち「学者」の「今すぐの危険性はない」と云う言葉は、「今すぐ症状が出る訳ではないが、晩発性の影響はあるだろう(将来に渡っての悪影響は免れ得ない)」と読み替えなければなりません。

報道の奇妙さに気づいている人はどれだけいるのでしょうか? 「原発について詳しい専門家が テレビ出演していていいのかな、と不思議に思いました」という意見を見かけましたが、これは多分「学者」を買いかぶり過ぎ。テレビに出てくる「学者」は、非常時の現場を指導したり助言することなど期待されてはいない。彼らの職務は、テレビ等で国民に対し「危険じゃないから騒ぐな」と「洗脳」説明をすることなのでしょう。

穿ちすぎ、思い込みが強いって? いいえ、そんなことはありません。今回の地震・津波は「想定外」だったと述べた「学者」「専門家」もいましたが、想定していなかった自らの非を恥じる様子はありませんでした。一方、従来から原発事故の危険性を指摘してきた人たちや今まさに危険性を指摘している人たちが大メディアで取り上げられることは殆どありません。それはなぜ? 国や原発業界にとって不都合だから、という理由以外は思いつきません。まさに、大本営にとって都合の良い情報だけが発信されており、真実は多くの人々の目に触れないように隠されているというべきでしょう。メディア側は「国民をパニックにさせないための配慮です」と弁解するかもしれませんが、今進行している事態を過小評価してしまうと、今後の被害をより大きくしそうです。

地震後1週間を過ぎ、民放各社はもうバラエティ番組だらけ。それもまた危険性が去ったという「洗脳」に繋がっているのでは? これも、ある意味で大本営による情報コントロールの一種なのでしょう。コマーシャルを制限した特番ばかりでは民放は成り立たないのでしょうが、もう少し別の方法をとれないものでしょうか。

でも、今はインターネットがあります。幸い、中国のように当局に都合の悪いサイトを強制的にシャットダウンするような事態には至っていません(たぶん)。ネットには真実や真相に迫るものもあるでしょうし、間違いやガセネタも横行しています。それもまたネットの特長です。でも、TVや新聞が本当の話をしないのなら、私たちは真贋入り乱れたネットの中から生きるための知識や知恵を学び取っていかなければなりません。非常時の今こそメディア・リテラシーが問われています。