次の手は米国債の改悪?

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トランプ話の続編。先週トランプ政権は世界各国に対し関税の改悪を行いました。このままトランプの言い分を呑むのか、それとも軽減できるのか、これから各国それぞれが米国と一対一の交渉を始めます。なぜトランプ側がこんな無茶な税率アップをするのかといえば、これをドル安あるいはドル切り下げ交渉、米国債の組み替え交渉の材料にしたいという思惑があるからです。

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関税の税率アップで物資の価格が上がり米国内でも生活が苦しくなるのに、なぜそんなことをするのか。前回紹介したStephen Miranさんの論文を読むと、関税改悪はドル安あるはドル切り下げの手段の1つとして位置付けられています。米国債を改悪するために、その押し売り交渉の材料として関税アップを使うつもりのようです。

具体的には何か。

1)米国を中心とする安全保障の傘に入る国は資金提供として米国債を買え。
2)その米国債は century bonds(100年債?世紀債?)の超長期債のことで、短期債ではない(short-term bills)。
3)保有している短期債を超長期債に組み替えなければ、関税で傘の外へ閉め出せ。

という空恐ろしい提案です(私訳です、念のため)。

おまえの国は米国の言いなりにお金を貢ぐのかどうかという醜悪極まる絵踏みのようなものでしょう。とくに三番目が厄介で、実質的なボッタクリ。関税改悪は米国債改悪の前振りだ、という明確な意図が窺えます。

出典はStephen Miran, “A Users Guide to Restructuring the Global Trading System”  Nov. 2024

投資の世界では米国債は従来ゼロリスクと云われてきました。というのもドルは世界の基軸通貨だし、世界経済の中心は米国だから今後破産することはなく債券は安泰だと考えられたから。でもその考え方は上記が執行されれば過去のものになります。特に超長期債はゼロリスクどころかボッタクリになってしまいます。

もし米国債の改悪を呑めば、山ほど保有している日本への影響は計り知れません。米国の核の傘の下で生存権が与えられている限り米国の言いなりですから、米国債を売りたいと思っても米国は絶対許しません。長期債、それもストリップ債は額面だけは数字が大きくても毎年の利払いもなく、満期になっても支払いは行われず、次の長期債を購入させられるだけでしょう、きっと。

バフェットさんは、関税は「ある程度の戦争行為」だとCBSニュースのインタビューで説明し、「すぐに血を流すことはないかもしれないが、間違いなく報復を招く侵略行為だ」とのこと。トランプ政権にとっては世界相手にまず関税で戦争をしかけたということかもしれません。

繰り返します。関税アップの次は米国債の改悪、ドル安・切り下げ。それがいつかはわかりませんし、杞憂であって欲しいと思います。でも、そうなってしまうと株も通貨も吹っ飛びます。ご用心。とにかくトランプはこの世界をトンデモナイものに変えてしまいそうで恐ろしい。