トランプの目論見はドルの切り下げ?
2025/04/04
プラザ合意ってご存じですか。1985年にドル円の為替相場が半分になった出来事です(円の切り上げ、ドルの切り下げ)。当時日本からの電機製品などが米国や世界を席巻し相手国の製品が売れないという事態となったため、相手国の産業保護のために飛び出してきた為替合意でした。それと同じようなドルの切り下げをトランプが狙っているらしい。
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日本時間の4月3日にトランプ関税が発効しました。輸出入の相互関係で各国との関税を見直すというもので、たとえば日本から米国への自動車の関税は2.5%から25%アップして27.5%になってしまいました。トランプ関税に対してはどこの国も対抗措置を打ち出すことに当然なるでしょうが、日本はどうするのでしょうか? そもそもトランプの狙いは何でしょうか?
どの国でも関税アップになれば輸入品の値段が上がり物価も上がり、その分庶民の可処分所得は減って暮らしを圧迫します。米国民にとってもイイことはあまりなし。関税を上げて輸入品の価格を上げれば米国内産業の品が売れるはずという目論見が実現するかどうかは一概には言えない。というのも、米国内製造のモノと他国からの輸入品では品質や性能が違うので米国民は輸入品を選好してきたという経緯があるからです。
そんなことを考えれば、トランプはなんてアホなことをするのかと思っている人は多いはず。でも、これが厄介な話の前振り、あるいは前哨戦だとしたらどうでしょうか。

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実は最近お金に詳しい人たちの間でよく話題に上がるのが「マールアラーゴ合意」。マールアラーゴ(Mar-a-Lago)合意とはフロリダにあるトランプ別荘の名前からとったもので、多国間通貨合意の枠組みのことを指します。そうです、トランプが狙っているのはドルの切り下げではないかという懸念があるのです。
トランプ政権の経済諮問委員会(CEA)委員長スティーブン・ミラン氏が昨年発表した論文がその根拠となるもので、強い米国を実現させるためには関税強化、ソブリンウェルスファンドの創設、利下げ、ドル安誘導などが必要だとしています。要するにトランプはそれを着々と実行に移しており、突拍子もない政策という訳ではないのです(もしご存知なければマールアラーゴあるいはMar-a-Lago Accordで検索してみて下さい)。
既にトランプ政権は関税強化に着手しました。利下げは再々FRBに対して要求しています。輸入品に関税をかけて米国の物価が上がり生活が苦しくなったら、次は通貨を切り下げて、米国債という途方も無い額の借金を大幅に減額しようとしているのではないでしょうか(50%切り下げなら半減、90%切り下げなら10分の1)。
ドルの切り下げといってもイメージがわかないとしたら、一例をあげてみましょう。現在米国製の車価格が1000万円だとすると、半分の切り下げで500万円(テスラの高級ラインを想定して下さい)。トランプ政権は10分の1に切り下げたいという噂もあるので、それだと100万円。米国製品は海外で実に売り易くなります。
現在の世界はドルを基軸通貨としており、ドル建てでモノの価格が決まっています。そのドルが切り下げられたらどんなことになるのか。ヒントは40年前のプラザ合意。個人的には当時持っていたドルのトラベラーズチェックの価値が半減してしまった痛い思い出が甦ります。一般的に云って米国株式や米国債券に投資しているお金は円建てに換算すると大幅減になります(50%切り下げなら半減、90%切り下げなら10分の1)。
もう1つ。日本の株式市場を動かしているのは半分が外資。あなたが外資系ならどう考えますか。日本からの輸出が減って株価がいずれ下がることを考えたら、利がノっている間にいったん売っておいてベタ底になってから買い戻そうとするのではないでしょうか。ここ数日の動きはまさにそういう流れではないかと思う次第。ただし、もしもドルが半分に切り下げられたら、ドル建て資産は半減、一方で円建ての株式や債権はドルに換算すると倍額になることにご注意下さい。
桜が見頃になってきたのに鬱陶しい話。ドルの切り下げがいつ起こるか、私にはわかりませんし、起こらないかもしれません。もしあなたにドル建ての株式やドル資産があるのなら要注意。1985年の私のような痛い思いをしたくなければ、それぞれの年齢とドル資産の多寡を睨みながら対処法を考慮すべき時でしょう(きっぱり)。