八月後半は映画三昧

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今年の8月もすでに31日。
五山送り火が終わり、月末は映画を4つ鑑賞。とくにデンマークの映画は初めてで、その内容に驚き。ダリの映画はレストラン側シェフ側からの視点で話が構成されていました。三つ目はアクション系。4つ目は日本映画の『ラストマイル』、今風の話題満載で含蓄のある社会派映画なのによく練られた脚本のおかげでテンポ良く最後まで楽しめました。

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まず一つ目。『ぼくの家族と祖国の戦争』、タイトルがもう1つですが内容は印象的。映画の舞台はデンマーク、ナチスが降伏する一ヶ月前から始まります。ドイツが敗戦濃厚になり、オーストリアなどからドイツ系難民がデンマークへ押し寄せてきます。そんな話があったことさえ私は知りませんでしたが、軍人以外の一般市民の面倒をみるのをナチスが諦めたのでしょう。

[映画『ぼくの家族と祖国の戦争』)

一方、デンマークはドイツに占領されていたため、デンマークの市民大学はドイツ軍の命令で難民を受け入れることになってしまいます。でも、自国民の食糧確保さえままならないのに敵国ドイツの難民に対して住環境を提供し面倒をみるのは当然気が進まみません。そんな中、難民の中で伝染病が流行ります。放置しておけというデンマークの地域住民側とドイツ難民であろうと命を助けるのは当たり前という学長家族との間に軋轢が生まれ・・・、というストーリー。

実話ではないと説明されていますが、おそらく似たような話があったのでしょう、きっと。ナチスの非道さは誰しも知るところですが、ドイツ国民が皆ナチスだったかといえばそうではありません。WW2が終わって早や79年。わかりやすい戦後史が蔓延る中で本映画で展開されるような、影の中に押し込められてきた歴史が掘り起こされるのは重い。関係者の尽力に感謝。

映画『美食家ダリのレストラン』

2つ目は『美食家ダリのレストラン』。ちなみに原題は『ダリのシェフ』。ダリとフェラン・アドリア(エルブジ)が同じ時期に同じ場所にいたら、どういうことになっただろうかという問題意識がこの映画の発端らしい。

調べてみると、ダリは1904~1989、フェラン・アドリアは1962年生まれで、エルブジのシェフだったのは1987年くらいから。既に閉店したエルブジが有名になったのは1990年代の終わり頃だったので、全盛期には2人にオーバーラップなし。なるほど。こちら、何度かエルブジの予約をしようとしたけど一度もできなかった思い出がまた蘇りました(苦笑)。

映画では実に痛快な、そして美味しそうな場面が次々に登場し、グルメな人なら垂涎もの。アートと美食には共通点が多いと言ったらどれだけ賛同してもらえるのか不明ですが、映画に出てくるレストランオーナーの台詞やシェフの創り出すお皿の上の世界の素晴らしさに納得です。

映画『フォールガイ』

三つ目は『フォールガイ』。ライアン・ゴスリングとエミリー・プラント出演と訊けば映画は間違いなし。最初と最後のシーンがサンドイッチになるという王道映画の仕掛けを含め、脚本もかなり練られていました。中身をバラすと興醒めなのでナンですが、今から観るなら、タイトルのフォールガイがダブルではなくトリプル以上の意味合いを持っていることをご確認いただけると面白いかも。

最後は『ラストマイル』。久しぶりの日本映画。よくできた脚本にまず拍手。最後の最後まで謎解きできませんでした。アマゾンかどこかの配送倉庫が舞台で、死者が出ても配送コンベアを止めない非人間的なセンターとそれに追随する配送業者の悲壮さを下敷きにドラマが展開しています。

映画『ラストマイル』

内容を書くのはこれまた観る人に失礼なので省きますが、1つだけ。いっしょに観た連れ合い曰く、死者は最初の1件程度で収まっているとのこと、これは驚き。どうりで内容が重い割に明るさを感じるはずだ。

批評などでは触れていないようですが、監督、脚本、プロデューサー、主演、すべて女性というのも時代の流れ。最近AppleTV+で「サニー」を毎週観ていますが、この制作陣も女性中心。才能に男女の区別はないはずなので、アートも音楽も、いや社会全体に広がる男性の既得権を薄めていくと世界は少し変わるかも。