コロナ禍でタイムラプス

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ちょっと真摯な話。次の国政選挙が迫っています。内輪もめな野党に投票したくない向きも多いでしょうが、新型コロナで無策無責任だった与党に票を入れたら現状でオッケイというシグナルにしかなりません。少なくとも与党にお灸を据えるという選挙でないと、この国の利権構造は温存されてしまうのではないでしょうか。

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今回触れるのは、新型コロナ禍(以下、コロナあるいはコロナ禍)のせいで、この国のタイムラプスが進行中、つまり、来たるべき厄介な未来が到来するのが早まってしまったという話。

河合雅司「未来のドリル」(講談社現代新書)

タイムラプスとは、要するに早送り。通常は一秒に30コマ(あるいは24コマ)で撮影するところ、15秒とか30秒以上毎に1回しか撮らなければ再生する時に早送りになります。ゆっくりした動きのモノ、たとえば星空などを撮る時に有用ですし、最近ではiPhoneにもインストールされていますから知っている人も多いはず。

さて本題。ご存じのように以前から少子化や高齢化は進んでいましたが、昨年来のコロナ禍でこの状況がまるでタイムラプスしたかのように加速化しました。まず、出生数の大幅減少です。

河合雅司さんの「未来のドリル」(講談社現代新書)によると、「2021年の年間出生数は75万程度にまで減る可能性がある」とのこと(正確な数は来年2022年にならないとわからない)。国の調査研究機関では2039年に75万人と予想していたので、コロナ禍で18年も早く到達してしまうことになります。まさにコマの早送りのごとく、この国の未来への時間が圧縮されてしまいました。

またコロナ禍で重症化する危険性がある高齢者が引きこもり状態を選好したため、娯楽や外食、旅行関連マーケットはほぼ壊滅状態。とくに高齢者のパック旅行は約96%減。この冷え込んだ消費マインドは簡単には戻らない、高齢化社会は感染症に脆弱だ、というのが河合さんの言い分。


出生数の減少は人口の減少に繋がり、高齢者の行動自粛もモノの販売を低迷化させ、サラリーマンの給与は当然下がります。一方で、税率は簡単に上げられず国の税収は減なので行政サービスは劣化し、医療サービスやインフラ関連サービスは値上げされ、年金額も減らされるので、ふんだりけったり(年金制度は破綻しないという論者には要注意)。

加えて新型コロナ禍がいったん沈静化すると、ジャブジャブ溢れていた世界中のマネー金利が引き上げられるので物価は騰がります。というか、ガソリンや油脂製品の値上げは既に始まっているし、今後の値上げも避けられません。その結果、私たちは支出を抑えようとするので更に経済は不況になり・・・という悪循環に陥ります。

要するに、コロナ禍でこの国の暗澹たる未来の到来が一気に進んでしまったということ。そろそろ収まるのでこれからは安心等といってはいられない位、コロナ禍は面倒な未来を引き寄せてしまったことに私たちはもっと関心を寄せるべき(きっぱり)。

商品価格はコロナ禍以降うなぎ登り。物価をみるには主要商品の先物14項目をまとめたこちらがベター。チャートは楽天証券より。

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ちなみに、日本の人口が今世紀初め頃にピークを迎えるのは1970年代後半には既に明らかでした。送る水がない水道施設、下水が入ってこない下水処理場、焼くモノがないごみ焼却場だらけになるゾと過大な建設計画に反対した私でしたが、成長戦略こそ重要だと考える社会はそんな声に耳を傾けることはありませんでした。

せめて20年前から対策を講じていれば状況は好転したかもしれませんが、コロナ禍で到来が迫った暗い未来にまだ打つ手があるのかどうか。いまだに成長戦略に拘泥するような70歳以上の政治家や経営者は現実無視で無責任の極み。少なくとも、もっと柔軟な発想を持つ若い者に席を譲って欲しいものだと思う次第です。