電気の原価

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前回の続き。数字がいろいろでてくるので読みにくいかもしれず、ソーラー発電に関心のない人は読み飛ばして下さい。

2009年に始まった電力の固定買取制度(通称、FIT)。期限は契約後10年なので、最初の契約者はこの秋で終了となり、買い取り価格は大幅ダウン。具体的には10年前の買取価格48円/kWhが7~8円。その安値の根拠について報じるメディアはありません。なぜ一気に80%以下になるのか、ちょっと考えてみましょう。

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太陽光発電で作った電気の買取制度は1990年代から既に始まっていました。3.11の東電原発事故(2011年)後に設けられたものではありません。当時の買取料金は市販の電力料金と同じで、関西電力管内なら25円程度(従量制)。

ところが、2000年代になって太陽光発電の普及が低迷してきたため、2009年に固定買取制度(通称、FIT)がスタート。この時、関連設備費を約10年で回収できるように配慮し、48円(2009年)と従来の倍額に設定。これは国際的に遅れ気味だった再生エネルギー利用を日本でも引き上げようという意図がありました。

この買取価格の設定は10年間という時限制度だったので、今秋から個々の電力会社が設定する価格でしか買い取ってもらえなくなります。報道によると、その価格は大手で1kWh当り7〜8円。それまでよりも大幅に安い値段となるようです。

考えみれば、それぞれの屋根上で作った電気はその家だけでなく隣近所でも使えるわけですから電力会社の電気と同じ。だから販売価格が電気料金といっしょでも何ら不思議ではありません。

ただ、売る価格と買取価格が同じでは電力会社は事務手数料だけ損だから、常識的に考えれば買取が販売価格よりも低く設定されるのはわからないことではありません。

でも、販売価格が22〜25円のところ買取が7〜8円というのは、7〜8割引きで仕入れた商品を高く売るのと同じです。

この一方的な買取価格は妥当なものなのか。この価格の根拠について公式の説明を見たことがありませんし、メディアもそれを問題視しているようには思えません(私の調べ方がまずいのならご免なさい)。


調べてみたら、7~8円というのは(関西電力の場合、数年前の原発が動いていない時の)燃料費に相当するコストと同じであることに気づきました。

少し古い資料ですが、関西電力で大飯原発が動いていない時代に料金改定で国に提出した資料。この場合を計算すると燃料費相当分が1kWh当たり7円程度。

最近は為替が円高傾向、原発も一部稼働、そして何よりも省エネが進んできたのか電力自由化の影響なのか、電力消費量そのものが減ってきました(5年前の18%ダウン、過去最高から比べると24%ダウン)。これが本当に使用量減ならば、原発なくても大丈夫な時代に近づいてきたなと内心嬉しく思っていますが、それはさておき・・・、

今回の関西電力が予定している買取価格は8円。関西電力の最新資料で計算すると、燃料費+修繕費+減価償却費の合計が8円程度なので、電力会社の原価程度。電力会社側に立てば、8円買取も全く根拠のないことではありませんでした。

さて、私たちはどうすればいいのか。電力会社の一方的な値段設定をそのまま受け入れるのか。

1)FIT終了後は販売先を自由に選べるので、より高い値段をつけてくれる会社へ販売する。
2)蓄電池などを設置してできるだけ自家消費するように努める(売らない方向を目指す)。
3)余剰電力を預ける制度を使って安値売りを避ける。

等々が考えられますが、もしあなたが原発推進に反対なら、原発を一切作っていない沖縄電力を選ぶとか、原発推進に異を唱える新しい電力会社に売るとか、そういったことも考慮したらどうでしょうか。蓄電池はコスト的にもコントロール的にも問題ありなので、(私は既に利用中ですが)誰もが手を出すのはまだ薦められません。

私はローカルな系統連携システムこそ屋根上発電の効用と考えているので、とりあえず夏以降に公表される3番目の余剰電力預け制度の内容を確認してからの話だと考えているところです。