家づくり実践記(12):壁紙こわい

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日本消費者連盟関西グループ『草の根だより』(99/09月号所収)    

 壁紙といえば、接着剤が問題、塩ビの可塑剤が危険だという話はご存じだと思います。しかし、最近はホルムアルデヒドが入っていない接着剤も出ていますし、塩ビ以外の壁紙もたくさん出回るようになったので安心、なんて思っていると大変な目にあいます。今回は、誰も教えてくれない壁紙のこわい話。

 塩ビ系壁紙から有機リン酸塩のTCEPが高濃度で気散し、居住者の健康を害する大きな要因になっていると指摘したのは植村振作先生(阪大)でした。1994年の話です。TCEPは塩ビの可塑剤であるとともに、壁紙の難燃性を高めるために使用されていますが、発ガン性があり、室内汚染物質のひとつとして見過ごすことはできません。

 最近、接着剤の危険性や塩ビ問題が広く知られるようになり、大手住宅メーカーでもちゃんと対処しているようなコマーシャルをTVで流しています。筆者自身、塩ビではない壁紙を使えば、まず問題はないだろうと理解していたところ、国内大手壁紙メーカーのカタログを見てびっくり。実態は全く違っていました。塩ビ壁紙は減ってきたけど、有害物質の有機リン酸塩は未だに大手を振って壁紙に使用されているではありませんか。つまり、塩ビ排除というわかりやすい話の影で、防火、防炎を確保するための難燃剤として危険な有害物質がそのまま非塩ビ壁紙の中に残されているわけです。

カタログに防火、難燃等と書いているものは皆危険な有機リン酸塩 TCEPか類似の危険物質が含まれていると考えた方が無難です。塩ビではないからといっても安心できません。危険な有機リン酸塩を排除した製品はいくつかありますし、ルナファーザーのように、より安全な難燃塗装施工込みの製品もあります。しかし、これらはごくごく小数の例外。大手壁紙メーカーの製品はほとんどアウトです。健康住宅とか健康素材といった解説本には、この危険性について指摘したものを見たことがありません。困ったことです。

 では、どうしたらいいのか。安全な家を作ろうと思っている方はまず、壁紙を使わないようにするのが第一。また、2x4のような壁構造の家や洋風の家で壁紙を使いたい場合でも、難燃剤を使っていない製品を選ぶのが得策です。さらに、防火規制が厳しいキッチン廻りには壁紙を使わず、タイル貼りにする等の工夫が必要です。
 

 拙宅の場合、キッチン廻りの壁紙を選ぶ段になって有害な有機リン酸塩から逃れるスベがほとんどないことに唖然とし、急遽壁はタイル貼り、天井は化粧石膏ボードに変更しました。うっかりしていると、とんでもない製品を掴んでしまうところでした。いやはや、有害物質を排除した家づくりは簡単ではありません。最後の最後まで建材素材チェックに頭を悩ましています(苦笑)。
 
 TCEP:トリス(2-クロロエチル)ホスフェイト