穀雨

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青い空と碧い海、それだけでもオッケイのところに、美味しいものがあれば文句なし。野菜中心のお料理が素晴らしい今帰仁の「カフェこくう」を紹介しましょう。

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古宇利島の小さな宿をベースにして3日間ほど本部・今帰仁・名護周辺をぶらぶらしました。近くでどこか美味しい処はないかと思案していたところ、連れ合いがトリップアドバイザーかどこかで見つけてきたのが「カフェこくう」

「こくう」という変わった名前は二十四節気の「穀雨」から採ったとのこと、虚空や悟空じゃありません。ビーガンorべーガン(菜食主義)とは銘打っていませんが、食材は野菜中心。自宅農園の野菜やご近所から届くものをいろいろな調理方法や味付けで美味しく食べさせてくれます。

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当日お昼前にお席ありますか〜と電話すると、ご主人が軽快な優しい口調で「大丈夫ですよ。お店の場所わかりますかね〜」。こちらがグーグル君で向かうと応えると「じゃ大丈夫ですね」とのこと。どうやら場所はわかりにくそうです。ただ、『電話の受け答えでお店の雰囲気はだいたいわかる』と日頃から考えている私にとって、この優しい雰囲気はマル。行く前から期待が高まります。

今帰仁の通りを山側に5分強、ホンマにレストランがあるんかいなぁと思わせるような道をひたすら登って行くと別荘地が広がりました。その突端の海側がお店の場所です。こりゃ辿り着くのが難しい(笑)。でも、駐車スペースにはお客の車がいっぱいです。

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海を望む高台というロケーションからわかるように、お店全面の窓から見える景色は絶景。それだけで御馳走というべきでしょう。でも、それだけなら他にも似たようなお店がありますが、この店の素晴らしいのは卓越した野菜料理、その繊細で絶妙な美味しさ!

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写真を見るだけではなんてことない野菜料理だと思われるかもしれません。でも、ごま風味だったり柑橘系の味をつけていたり、あるいは出汁を効かせていたり、素材の持ち味中心だったりで1つ1つが全く別モノ。野菜そのものの味が濃いだけでなく、素材に併せて巧みに調理方法を変えているため異なる味や食感が楽しめるるのです。

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たとえば最初に出てきたおひたしが美味だったので材料は?と訪ねるとモロヘイヤとのこと。拙宅にもありますが、このお店の出汁加減は真似できない微妙な味わいでした。

特筆すべきは器使い。器如何でお料理が引き立つのはご存じの通りですが、料理をどう活かすかという審美眼やセンスが問われますから実践するのはなかなか難しい。ここでは若手作家の作品らしいものをふんだんに使ってお料理を盛り上げているのですが、それがまたお店の「味」になっています。帰宅してblogを見ていたら、当初は皿いっぱいの盛りになっていて素敵な器を活かせていませんでしたが、先日私たちが訪れた時にはお料理を載せない部分の間を活かしたものになっていて感心した次第です。

普通の野菜料理に何を感動しているのかと云われそうですし、鮮度が良ければ美味しいはずという意見もあることでしょう。たしかにその通り。採れたての美味しいものをさらに美味しくするのはどうしたらいいのか。その答の1つが「こくう」にありました。しっかり仕事をした京都の一流料亭のお皿にも負けません。野菜毎の下ごしらえの手間を考えると大変だと思いますが、それでも手を抜いていないようです。糖質制限派にとってはサントリーの「オールフリー」を置いていたのもマル。

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そしてホスピタリティ。私たちは2度ここでランチしたんですが、一度目の訪問時ご飯は2人で小盛り1つと糖質を抑えた注文をしていたことを奥様やお店の方が憶えていて、二度目の訪問時は何も言わなくでも超小盛にして下さいました。また、二度目の時にはオーナー自身がお店の前に植えている長命草を摘んでその場で天ぷらにして下さったりの計らいに恐縮しました。末永くというメッセージも込められていたのでしょうか、それにしても一期一会を愉しんでいらっしゃる懐の深さに感激です。

沖縄に移住して土地を手に入れ、類い稀なる野菜料理のレストランを開いた「カフェこくう」。今年で4年目だそうですが、苦労してレストランを建てた記録もblogから辿ることができます。美味しい料理に器の妙、お店のホスピタリティ、どれをとっても二重丸。私たち夫婦はお店の雰囲気にシンクロしてしまい、実に居心地のいい時間を過ごさせてもらいました。

「カフェこくう」、お薦めです。沖縄へ行かれたら是非どうぞ。
ところで、このお店の器に興味を持ったのでお店のオーナーに尋ねると、那覇のお店にありますよと案内状を頂戴しました。この陶器屋さんの話はいずれ・・・。

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