超インフレの準備 その1

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ハイパーインフレに対抗するために実物資産の確保をどうするか。
一般に不動産や株はインフレに強いと言われますが、それはなぜでしょうか。本当に有効なのでしょうか。私の見解を展開してみましょう。(タイトル変更:1/19)

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先の逢沢本では、ハイパーインフレ時の個人資産防衛法として「決済用普通預金」の他、

  • 預貯金を実物資産に変えるのが賢明な策
  • 不動産は(中略)長期保有に徹すること
  • 株価はいったん暴落するが、ハイパーインフレ後に暴騰するはず
    逢沢明「国債パニック」p.218)

と書かれていました。前回触れたように、この記載に私も同意します。でも、それだけで準備万端なのか、そもそも不動産や株に縁がない者は蚊帳の外なのか、そこが問題なのです。

15118m3まず、なぜ実物資産に変えるのが賢明なのか、なぜ不動産や株はインフレに強いのでしょうか。

その理由は、インフレでお金の価値が下がっても、モノが本来持っている価値はあまり変わらず、その価格が相対的に上がるからです。

モノの本来価値とは何か。トイレットペーパーを考えてみて下さい。体をきれいにするために消費するのが主用途です。インフレでお金の価値が変わっても、お尻の拭き具合が変わるわけではありません。本来の目的に対する価値はいっしょなのに、たとえばインフレ率が10倍になれば値段は10倍以上。お金を基準にすると価格が大変化してしまいます(注1)。

不動産を考えてみましょう。土地や建屋の本質的な価値はインフレであろうとデフレであろうといっしょです。変化するのはお金で計っている価格の方ですから、インフレ時には相対的に騰がります(注2)。

次に株はどうか。こちらは実体がなさそうですが、株式会社の本来価値を反映している株の場合には、インフレ時には不動産と同じく価格が上がります。逢沢さんが「いったん暴落する」と言っているのは、破綻パニックで市場が動揺してしまうことを指しており、「ハイパーインフレ後に暴騰する」というのは暴落後に本来価値が見直されるからです(注3)。

ということで、不動産や株はインフレ時には相対的に(あるいは、お金で判断すると)価格が騰がります。だから、現金(預貯金)で資産を持っているよりも有利になるというわけです。

15118m2でも、よく考えてみて下さい。不動産や株を持っているからといって日々の生活を賄うことが可能でしょうか。不動産は簡単には換金できません。株は混乱当初は乱高下で売りにくくなるし、インフレに同調するまでには数ヶ月~数年の時間を要します。つまり、現金のあてが期待できなくなる期間がどうしても出てきます。

一方で、ハイパーインフレでモノの値段が大幅に騰がると、一気に食料や衣服の購入費、住居の家賃が跳ね上がり、人によってはローン債務で呻吟することになります。そう考えると、現金の手当が十分でない状況で衣食住をどうするのか、つまり日々の生活を賄うにはどうしたらいいのか、個別的具体的に考えていかなければなりません。

ここで大切なことは個々人の健康です。健康なんて、あまりにも当たり前過ぎて、ふだんは気にとめてない人が多いと思いますが、健康は失ってからその大切さがわかるというではありませんか。

15119m1私思うに、個人資産の最たるものはお金や不動産や株等よりもまず健康。混乱期なら尚更のこと、健康を一番に考えるべきです。これを前提にした上で、大混乱期の日々の生活を乗り切るための方策を考えてみましょう(続く)。



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(注1)実際、そのことが起きたのが1970年代前半の日本でした。円が変動相場制に移行し、加えて中東戦争勃発で石油ショックが起きると大幅なインフレが発生し、トイレットペーパーが買い占められ、町の中から無くなってしまいました。その10年間で物価が3倍になった一方、労働者の賃金や公務員の給料も遅ればせながら3倍(1970年と1980年との比較)。折しも当時は高度経済成長の時代で日本経済の勢いが活発だった頃、為替や石油の事件がなくても物価が上昇している最中だったこともあり、日本社会は何とか乗り切ることができました。インフレ3倍でも日本社会はその衝撃を吸収できたのです。でも、これから来るインフレが3倍で留まる保証はありませんし、人口減、高齢化、経済成長頭打ちの状況の中ではハイパーインフレを乗り切るのは難しくなるでしょう。

(注2)これとて不動産需要があっての話であり、日本の不動産を買おうという客がいなければ騰がるものも騰がりません。

(注3)本来価値とかけ離れた株価がついている場合は、この限りではありません。要するに株なら何でもオッケイというわけではありません。