嶋津さんに田尻賞

Water

水問題原論 (シリーズ「川・湖・海を守るために」)暑いですね。昨晩水源連の遠藤さんから、嶋津暉之さんが今年の田尻賞を受賞されたのでそのお祝いをしましょう、との連絡がありました。
最近とんと世情に疎いので全く知りませんでしたが、受賞は先月のことだったようで、遅ればせながら、おめでとうございます。…

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嶋津さんは私にとって先生(と勝手に師事している)のお一人。初めてお会いしたのは、私がまだ二十歳になる前の、水問題を本格的に勉強しようと思い立った1977年の頃。

巨大なダムや河川開発のもとになっているのは、水需要の見通しです(将来予測)。人口が増える、工場出荷額が増える、だから水もたくさんいる、そういう右肩上がり前提の計算が当たり前の時代でした。その中で工業用水の水需要が何故過大なものになるのか。嶋津さんの博士論文が見事に説明していました(宇井純氏が彼の「公害原論」で紹介し、本のカタチに一般公開されていた)。

要するに、工業用水の原単位の分布は正規分布にはなっておらず、実は大工場のものに引っ張られてしまい、それが平均値を大きくさせ、過大な水需要のモトになっている、ということでした。もちろん、論文にはもっといろいろなことが記されていますし、議論ももっと複雑ですが、当時の私の理解はその程度。計算機が一般ではなかった時代ですから、通産省などにあった磁気データをあれこれいじるのは、かなり面倒な作業だったと推察されます。ご本人の研究成果を琵琶湖訴訟の勉強会の席で伺い、世の中には賢い人がいるのだなぁと感心しつつ、自分もいつかそういう仕事をしてみたいと思ったものでした。

そして、琵琶湖訴訟の経過の中で嶋津さんにあれこれ教えていただきました。水需要の考え方、国土交通省(昔の建設省)の狙いやその姑息な方法のあれこれ、河川や湖沼を取り戻すための方策などなど・・・。嶋津さんの御著書である「水問題原論」は今でもときどき読み返す必要にかられる名著です。

御本だけではありません。嶋津さんのご活躍は新聞紙上などでの紹介されている通りで、現在は水源連の共同代表として全国のダム河川問題に関わっていらっしゃいます。それら一連の活動が田尻賞受賞につながったものだというのは間違いありません。

お祝い会には上京できそうにもありませんが、とにかく、おめでとうございます。国や東京都は嶋津さんの真価を評価したくないでしょうが、だからこそ尚更、おめでとうございますと云いたいですね。