家庭ごみの有料化でごみは減るのか?

.opinion

5月31日の朝日新聞トップ記事は、「家庭ごみの処理、原則有料  環境省が市町村誘導狙う」でした。一向に減らない家庭ごみ対策として、環境省は「自治体によるごみ処理を全面的に有料化」させようというものですが、はたして有料化でごみは減るのでしょうか?私は懐疑的です。ごみの有料化は広域大型ごみ焼却推進の資金援助になるだけでしょう。…


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
環境省のごみ政策は、大型広域のごみ焼却・処分を前提にしています。つまり、ごみそのものを発生源から減らし、日常生活から出てくるごみを可能な限り少なくして、ごみ焼却場や処分場に依存しないような政策を指向しているわけではありません。この状況下で、ごみの有料化が如何なる意味を持つのか。厄介な状況が見えてくるのは私だけでしょうか。

だいいち、ごみ処理はで地方自治の範疇ですから、国があれこれクチを出すこと自体が法律違反ですが、話が長くなりますので、まぁそれはパスしましょう。

現在、日本でも多くの人たちがゼロウェイスト運動や脱ごみ宣言!に取り組んでいます。たとえば、私の仲間たちの例でいえば、現在でも平均的家庭の約1割〜2割程度、つまり80%〜90%のごみ削減となっています。したがって、家庭ごみが有料化されると金銭的にはプラスですから、ウエルカムというべきでしょうか。いやいや、話は簡単ではありません。

ごみ袋を有料化して、その費用をごみ処理処分に使うことそのものには私は賛成です。ごみを出すと損をするという意識が出てくるだけでも大きな教育効果があるでしょう。でも、それだけでごみが大幅に減るでしょうか。

環境省が全国市町村を対象としたアンケートによると、回答した約1300自治体のうち、既に4割を超える533で何らかのごみ有料化を実施しているとのこと。でも、「有料化した人口10万人以上の23都市のごみ量は、導入前の1人1日当たり1110グラムから5年後は972グラムに減った」で(上記新聞記事)、減ったごみの量は芳しくありません。約12%減ったというべきなのか、それともたった12%しか減らなかったというべきなのか。私は後者です。ごみの有料化だけではたいした効果はなく、減らした分だけがせいぜい処分場の延命対策になる程度。いや、それこそが環境省の意図するところで、そもそも根元的にごみ減らしを考えているわけではありません。

お金の話で考えてみましょうか。ごみ袋の有料化といっても40円50円前後が関の山、1ヶ月でも400円500円(めっちゃ高額の有料化は議論するまでもなく非現実的)。最初は有料化に抵抗感を感じても、ごみを出さなければ日常生活に支障が出てくるとなれば、この程度の出費ならいずれ慣れるのが当たり前の帰結。これでは、ごみは減りません。それが先の自治体アンケート結果に現れている通りです。つまり、環境省のいうような有料化では、既に私や私たちの仲間が実現した「80%〜90%のごみ削減」には到底なり得ません。

さらに面倒なことを指摘しておかねばなりません。
ごみ有料化で行政が手に入れたお金はいったい何に使われるのでしょうか。10万人の自治体なら年に数億のお金になりますが、このお金は一般財源に組み入れられるでしょうか。高齢者福祉財源になるでしょうか。そんなことはないでしょう。この有料化で得られるお金はごみの手数料収入だと環境省が説明していますから、そのままごみ関連財源に組み込まれていきます。

このお金は、現在のこの国のごみ行政が大型広域のごみ焼却・処分を前提にしている限り、新たな大型ごみ焼却場建設費や財源不足の維持管理補修費に使われることになるはずです。つまり、環境省の言い出した「ごみの有料化」とは大型広域のごみ焼却・処分の財源不足を補おうというハラなのです。せっかくみんなでごみ減らしを行ってお金を作り出しても、その努力が新たなごみ問題を生み出すことになるとしたら、誰のための、そして何のための「ごみ有料化」なのでしょか。頭が痛くなってきますね。

ごみを本気に減らそうとするなら、大型広域のごみ焼却・処分を前提にしないことをまず指向する必要があります。これが現在、世界各国で始まっている、ゼロウェイスト政策、つまり、ごみそのものをゼロにしていこうという政策です。これが満たされない状況では、ごみをいくら有料化してもたいして役には立ちませんし、むしろ焼却炉被害を広げる財源になってしまいます。環境省のごみ有料化に安易に乗ると、かえって厄介になるというのはそういうわけです。

ついでながら、朝日新聞の記事にも一言。国当局のプロパガンダを一通り行った後で、住民の反発も予想される等とまるで他人事のように中立を装うのは、いつもの朝日新聞の手ですが、いただけません。こういう報道手法が市民の考える力を削ぎ落とし、いつのまにか大政翼賛に繋がっていくのではないかと私は心配です。