家づくり実践記(9):やっかいな断熱材

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日本消費者連関西グループ『草の根だより』(99/05月号所収)

夏をむねとせよ、そう言われてきた日本の住居は長い庇や風通しの良さで涼を採ることに長けていますが、反面、冬の寒さを防ぐのは不得意でした。最近の木造住宅では断熱材を使って寒さ暑さ対策を行っています。今回はその断熱材の話。

約30年前まで断熱材の主流はアスベスト。小中学校の理科実験の時に使った石綿付金網、あの石綿がまさにアスベストです。しかし、このアスベスト、呼吸器系のガンを引き起こす危険性があるため、現在では(わずかの用途を除いて)ほとんど使用されていません。そこで代わりに使われるようになった断熱材がグラスウールやロックウールです。
しかし、これら鉱物系ウールは、施工する時に飛び散って大工さんや施工者をチクチクさせるだけでなく、気管支や肺の中へ入り込んでしまいます。近隣住宅への影響も必至です。国際ガン研究機関では、アスベスト同様、これら鉱物系ウールにも発ガンの可能性ありと認定しています。さらに、これら断熱材の成形にはホルムアルデヒド系接着剤が使われています。私にはとても採用できません。
断熱材にはスチレンやウレタン、ポリエチレン樹脂等を発泡させたものもあります。しかし、スチレン等?ヘ有害性を心配しなければなりませんし、ポリエチレン系以外のものは発泡のために特定フロンを用いるため、フロンが使用現場からずっと放出されっ放し。断熱材の使用でオゾン層を破壊しているようなものですから、フロン入り断熱材は厄介です。
高断熱・高気密住宅によって冷暖房コストを下げ省エネルギーに努めるのが「環境共生住宅」のあるべき姿だと説く人が多いのですが、そのための断熱材がこんな状況では、とても環境にやさしいなんて言えません。断熱材ひとつとっても、現在の家づくりは居住者や環境に対してヤバイ状況を生みだしているのですから。
あれこれ探した結果、たどり着いたのは天然素材系の断熱材。このうち、天然ウール系は防カビ剤を入れている製品が多く、それを入れないと湿気対策を別途考慮する必要があることがわかり、拙宅では最終的に炭化コルクに決定。炭化コルクとは、ワインの栓に使うコルクを蒸し焼きにしたもので、断熱特性はロックウール並の優れ物。難点は値段、鉱物系ウールの20倍以上、発泡系樹脂素材の2倍以上になり、かなり高い。しかし、炭化コルクの代わりとして使えそうなものが見つけられなかったこともあり、私も連れ合いも目をつぶってえいやっと決めてしまいました。 既に屋根裏に施工しました が、施工に関しては鉱物系ウールのような痒み・痛みもなく、大工さんにも喜んでもらえ、仕上がりもなかなか素敵で大満足。居住者への安全性、施工者の健康、そして廃棄物問題まで考えるなら、少々値が張っても現段階では炭化コルク以外の選択肢はありえないと私は考えています。これから家を建てようという方は是非検討してみて下さい。