久しぶりに書籍を紹介。村木厚子さんの『おどろきの刑事司法』(講談社現代新書)です。

全く身に覚えのない容疑で逮捕・起訴されたら、「やってません」と否認するか、黙秘するか、警察・検察の調書にサインするか、あなたはどうしますか? 否認か黙秘の場合、何ヶ月も何年も勾留し続けるのが日本の警察・検察・裁判所の現状です。私は弱くて脆いので「やってません」と言い続けることを諦めてしまいそうです。
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「郵便不正事件」で虚偽有印公文書作成容疑で逮捕・起訴されたけれど、2010年9月の裁判で無罪が確定し、厚生労働省に職場復帰した村木厚子さん。全く身に覚えのない容疑で逮捕され、容疑を否認し続けたために164日も勾留されました。この事件を契機に、日本の刑事司法の深い闇を改善すべく村木さんが書いたのが、この本。その中から、印象的な話を2つ紹介します。
1つ目は、豊橋事件の被疑者を取り調べた元刑事の話。元刑事は取材記者に対して「3日あったら、お前に殺人を自白させてやるよ。3日目の夜、お前は、やってもいない殺人を、泣きながらオレに自白するよ。」と語ったとのこと(p119)。
2つ目は、厚生労働省職員の話。検察は職員から「村木さんは当時、国会で審議中の障害者自立支援法を成立させるために奔走していた」という調書を取り、サインさせていました。しかし、この法律が審議されたのは約1年後のことで、事件当時は法律そのものが存在しなかったのです。 ・・・ショックだったのは、10人中5人もの職員が、こうした(虚偽の)内容を認めて調書にサインをしていたことです(p59)。
警察や検察に呼び出されて事情聴取されたら、調書の内容が虚偽でもサインしてしまう人が半分いる、ということです。残りの半分も、逮捕すると脅されたらサインしてしまう可能性が高まります。「3日あれば、やってないことも『自白』させる」と豪語する元刑事もいるくらいです。
村木さんは職場復帰後に法務大臣の諮問機関である法制審議会の委員となり、市民委員4人と共に刑事司法の改革を目指しました。でも、警察・検察・裁判所・法務省やその意に沿う学者委員たちに改革を阻まれてしまいます。その経緯を書いたのが本著。村木さんたちの提案の主なものは下記の通りで納得のいくものばかりです。ぜひ本著を読んでお考え下さい(IZ)。
村木さんたちによる主な司法改革提案(著書から抜粋)
- 全事件・全取り調べの録音録画(低予算で100%実施可能、現状は約3%のみ。取り調べに弁護人を立ち合わせる制度を含む)
- 証拠の全面的開示(現状は、検察側に都合の良い証拠のみ開示)
- 「人質司法」の解消(どんな事件でも否認すると長期間身体拘束されるのが日本の現状)
- 法曹一元化へ向けて、裁判官の初期3年間を国選弁護人とする(被告・弁護側の視点を学ぶため)
- 再審開始は、裁判所ではなく第三者機関で審議する(イギリスの例などを提示)
- 再審開始決定に対する検察側の不服申し立て(抗告)の禁止(現状は、抗告して決定を覆す)