デジタルカメラの正体

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readl1312c「デジタルカメラは昔のフィルムのようなものだ」という意見を価格コムのサイトで読みました。まさにその通り。
日頃からモヤモヤ考えてしていたことをストレートに文章化したものに接し、まさにストンと腑に落ちる思いです。

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ネットには興味深い写真がいっぱい。ちょい昔だったら写真集を買ったり展覧会に行かなければ観れなかったクオリィティのものがワンサカで、それらを自宅のパソコンで簡単に観ることができます。今の人にとっては当たり前のことなのでしょうが、人生の半分以上を超えてしまった私には隔世の観あり。


さて、これゾと毎日見ている写真サイトの1つを運営している人が価格コムのサイトで興味深い意見を書かれていらしゃいました。曰く、

「現代のデジカメはアナログ時代のフィルムにしか相当しない」

だから、(写真を撮ろうとする場合)投資すべきはレンズではないか・・・ というわけ。まさに目からウロコ的な言い分です。

噛みくだいてみましょう。昔のカメラはフィルムに光を捕らえ、それを現像焼付することで印画紙に写真を写します。この場合、カメラとレンズはフィルムに記録するための道具です。

readl1312c (2)一方、デジカメではどうか。デジカメにはフィルムはありません。カメラ内にある撮像素子なる電子部品で光を捕らえ、それを電子メモリーに記録するのがデジカメの仕組みです。じゃ、昔のフィルムに当たるのは記録メディアのメモリーカードでしょうか。ここが問題です。

まず、記録メディア。これまでいろんな形式のものが登場し、容量もどんどん大きくなっていきました。昔はMBサイズだったのが今はGBサイズ。既に1000倍以上。64GBのカードでもリーズナブルな値段で買えますから、撮影枚数なんかほとんど気にする必要もありません。外国旅行に行く場合はフィルムを何本持っていけばいいのか、X線検査で感光しないためにはどうしたらいいのか等々で昔は悩んだものですが、そんな話は過去のものになりました。

ただ、記録メディア自身に光を受け止めるチカラはありません。ここがフィルムとは違う。デジカメでその機能を受け持つのは撮像素子です。

その撮像素子ですが、1990年代に登場した当時は素子密度が低く、アナログカメラのフィルムには到底かなわないだろうというのが通り相場でした。それがどうなったか。10年ちょっとで一般用デジカメの記録密度がアナログカメラを凌駕し、20年経った現在フィルム式のカメラは過去の遺物と化してしまいました。

ということで、フィルムに取って代わったのは撮像素子と記録メディアなのですが、カメラと一体なのは前者で、後者は交換可能です。記録メディアの価格が大幅にドロップした現在、先の「現代のデジカメはアナログ時代のフィルム」という言い分には肯けます。

実際のところ、デジカメはまだまだ発展途上。つい最近出てきたソニーのα7Rはフルサイズ版のセンサーを搭載して約20万円という価格ですから、ファインダーは違うとしてもフルサイズLeicaの三分の1、四分の1以下。来年には他のメーカーもフルサイズ版カメラを出してくるので性能や価格競争も激化してくることでしょう。

であれば尚更、カメラそのものはどんどん新式のものにリプレイスされてしまい、まさにフィルム的な一過性の運命を背負っていることになります(フルサイズ版というのは従来のフィルムサイズ程度の撮像素子の大きさ)。

一方で、交換レンズはメンテが良ければ50年前100年前のものでも十分使える、いやいやコスト主義の現代レンズよりも十分高性能なのはLEICA等から明らか。だから、レンズに投資せよというわけ。これが紹介した人の意見でした。これにも深く同意します。

お金で見てみましょうか。フィルムの場合、36枚撮りでフィルム代と現像代を合わせると1200円〜1500円程度でしょうか。100本撮れば12〜15万円、200本撮ればその倍です。よく撮る人なら1年以内でそれくらいの数はいってしまうでしょう。とすると、デジカメで10万円〜20万円というのは昔なら当たり前だったフィルムのコストとみれば、先のα7Rでも高価な感じがしません(苦笑)。

つまり、デジタルカメラそのものがフィルムなのです。私を含む昔アナログのフィルムカメラを使ってきた人は、カメラとフィルムとの関係に考えを留めてしまい、現在の変化を見落としてしまったのではないか。そんな感じ。どうやら既にパラダイムは変わってしまいました。そしてそこにも、The times they are a-chang’n。

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(蛇足)Leicaは来年で100周年。金持ちに媚びない赤丸なしの新製品を出すのかどうか。RICOHはフルサイズ版を出せるのか。そんなことが気になる私です。