ヒトはなぜ太るのか?

.Books&DVD… .Lowcarboあるいは糖質制限

ヒトはなぜ太るのか?私たちはなぜ太るのか? そんなの簡単や、消費するエネルギーよりもたくさん食べ、運動不足なら太るのは当たり前、そう考える人が多いのではないでしょうか。でも、左の本の著者、ゲーリー・トーベスさん曰く、その考え方は「当たり前」ではなく、科学的な根拠もない、誤った見解で人々を不健康な状態に陥れている、とのこと。
この本は200年以上に渡る肥満研究の成果を紹介しながら、本当の理由に迫っていきます。その展開はまるで推理小説のように面白い。そして、糖質制限の科学的妥当性を立証する画期的な良書となっています。

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この本を知ったのは糖質制限のエヴァンジェリストである江部康二医師が氏のHPで紹介されていたからです。早速注文して読んでみると、医学研究の成果を一つ一つ紹介しながら、肥満のメカニズムを解き明かしていきます。その語り口は論理的で実にわかりやすく、そして読みやすい。

最初に驚いたのは、食べるカロリーが多いから太るという見解には科学的根拠がないという点です。

本の説明によると、既に200年以上前から医者や研究者は動物実験やヒトでの調査を繰り返し行ってきた、でも消費するカロリーと摂取するカロリーとの間には肥満との明確な関係が出てこなかった、というのです。事実、過食や運動不足でも肥満にならない人がいますし、成長期のこどもを考えてみても、過食は体を大きくすることに使われ肥満に繋がるわけではないと、自分の息子を引き合いに出して著者は説明をしています。

思い起こせば私自身、2006年に狭心症を患ってから食事内容を改善しつつカロリーも減らし、毎日1時間はウォーキングを欠かさず暮らしてきましたが、体重はあまり減りませんでした。一方で食後血糖値がだんだん上昇してきたため、こりゃ糖尿病がやばいなぁということで糖質制限に踏み切った経緯もあり、著者の言い分は肯けます。

ではでは、肥満の原因が過食や運動不足ではないとしたら、いったい何がヒトを肥満させるのか。

自明とも思えるような疑問に挑戦した研究者らは、肥満は過食や怠惰の結果ではなく、「からだの脂肪組織の調節による変化」であるという見解に辿り着きます。そして、そのホルモン調節を決定づけているのが炭水化物であることを突き止めるのです。

sakurannbo13a要するに、食べるカロリーの総量が問題なのではないし、運動キライという怠慢さが原因なのではない、カロリーの一部である炭水化物が肥満の原因だというわけです。詳しい機序について興味のある人は是非本書をお読み下さい。

肥満の原因は炭水化物の摂取だという見解は、実は1960年代くらいまで医学界の一般常識でした。ところが、保健の専門家などが1960年代頃から心臓病の原因が脂肪であり、炭水化物は「心臓に良い」等と言い出し、状況が一変。新しい科学的な証拠が得られていないにもかかわらず、いつのまにか問題の焦点は炭水化物から総カロリー制限に置き換わっていくのです。

どうやら現代医学は根拠のない見解に基づいて私たちの命や健康を危ない目に遭わせているみたい。これでは誰も救われません。

医者や栄養学者は自分たちの知識がいかに根拠のない話に基づいているのか、何をどう理解しなければならないのか、是非この本を読んで肥満や糖質制限についての理解を深めて欲しい。また一方で、肥満に悩む人はもちろん、糖尿人、糖尿病もどきの人には有用な情報満載です。

今まで当たり前だと思ってきたこと、自明のように思っていることをもう一度考え直せという教訓はポスト3.11の現代の基本姿勢だと私は考えています。肥満や糖尿病、そしてコレステロール問題も要検討。私たち自身が本当のことを知らない限り、次の被害者はあなたやあなたの身近な人になるからです。そういう意味では、1人でも多くの方々に読んで欲しいと私は考えます。きわめてお薦め。

ちなみに、この本を翻訳をされたのは太田喜義医師。読みやすく仕上がっているため、翻訳とは思えないくらいです。よくゾ訳出して下さいました。本当にありがとうございます。

ayame13