Venison あるいは もみじ

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venisonbook今回はC.W.ニコルさんの「Venison うまいシカ肉が日本を救う!!」の紹介です。

Venisonとは鹿肉のこと。古くから日本では「もみじ」と称して食べられてきた獣肉です。今日、ブタや牛、鶏は食べてもシカは食べたことがないという人がほとんどではないでしょうか。でも、それはもったいない。鹿肉はうまいし、日本の自然を守るためにも是非トライしてみてほしいという願いを込めて書かれています。

ちなみに、本の中の写真は南健二さんの撮影。南さんは本サイトで何度も紹介してきた信州黒姫の「ふふはり亭」のオーナーです。本の中には奥様の南笑子さんもちらっと出てきます。

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この本にはシカの捌き方から調理の方法、さまざまなメニューのレシピが載っています。逆さづりにして直腸をしばって汚物で汚れないようにナイフやナタで切り裂いていくのは豪快ですし、読むだけでも多いに興味がそそられます。また数々のお料理もなかなか美味しそうでマル。でも真骨頂は、サブタイトルにある通り、なぜシカ肉が日本を救うのか、というポイントです。

ニコルさんは日本人とシカとの関係を歴史の中から解き明かしながら、日本の森とシカの生態との関わり合いに注目し、シカ肉を食べることの意義をわかりやすく解説しています。学問的な話は横に置いても、シカ肉に対する愛情というか、野生の獣に対する優しさを感じさせるところが、ニコル節。

ニコルさんが日本人とシカ肉との関わり合いを紹介する下りを読みながら、私たちより彼の方がこの国の食文化をよっぽど理解しているんだなぁと感心することしきり。

私の場合、レストランなどで赤みの強い柔らかいお肉をそのままステーキ風に焼いたものや、パテに姿を変えたもの等々、それなりに美味しく嗜んできました。でも、自宅で調理するのはなかなか難しく、何度か挑戦してみましたが巧くいった試しがありません。だから、この本の最後の方に出てくる、「わが家では、もはや牛肉を買うことはなくなった」というニコルさんの言い分に少々びっくり。そこまでの話なら、調理方法をこの本で学んで、またシカ肉に再チャレンジしてみようかと考える次第です。

聞くところによると、今年4月20、21日の代々木公園での「アースディ」でニコルさんが鹿肉料理を振舞うとのこと。関東方面の方で興味のある方はどうぞ。本は現在アマゾンでは取り扱っていないようですが、Hontoでは出てきますので、そちらからどうぞ。

それにしても、もみじ(鹿肉)とか、ぼたん(猪肉)、あるいはさくら(馬肉)等、日本では獣肉を花に喩えてきました。つまり、昔の人は肉の色の微妙な違いを花の色で表したのですが、その色彩感覚の鋭さだけでなく、獣肉に対する愛着がとっても興味深い。改めてそのことに思いを寄せる次第です。